Skip to content Skip to footer

モームの人間の絆の構成

## モームの人間の絆の構成

### 構成の特徴 ###

 サマセット・モームの小説『人間の絆』は、明確な章立てのない、全編を通して主人公フィリップ・ケアリーの半生を描いた長編小説です。時系列に沿って物語が展開していくものの、一般的な教養小説に見られるような、明確なプロットの起伏や山場は存在しません。むしろ、人生における様々な経験を通して、主人公が精神的に成長していく過程が、几帳面に、淡々と描写されていく点が特徴です。

### 各パートの概観 ###

 大まかに分けると、舞台とテーマによって、以下の4つのパートに分けられます。

1. **幼少期・少年期**: 孤児となったフィリップが、聖職者である伯父夫婦に引き取られ、厳格な寄宿学校生活を送る中で、自分の足の障害や周囲との違和感に苦悩する様子が描かれます。
2. **青年期・ドイツ留学**: 学校を卒業した後、将来に迷いながらも、ドイツのハイデルベルク大学へ留学し、自由な学生生活の中で様々な価値観に触れ、青春を謳歌します。
3. **ロンドンでの生活**: 帰国後、ロンドンで会計士の資格取得を目指すも挫折し、その後、画家の道を志してパリに渡り、芸術の世界に没頭します。
4. **医師の道へ・自分探しの終焉**: 経済的な困窮から再びロンドンに戻り、医師を志して勉学に励みます。医師免許を取得し、人生の目標を見出すまでが描かれます。

### 人生における様々な経験と邂逅 ###

 各パートでは、様々な人物との出会いと別れが繰り返されます。特に、フィリップが片思いをする女性たち(エミー、ミルドレッド、ノラ、サリーなど)との出会いと別れは、彼の精神的な成長に大きな影響を与えます。

### 主人公の心理描写と成長 ###

 本作では、フィリップの一人称視点で語られることが多く、彼の内面、特に自己嫌悪、宗教、芸術、恋愛などに対する葛藤が赤裸々に描写されています。これらの葛藤を通して、彼は徐々に自分自身を見つめ直し、人生に対する独自の哲学を築き上げていく様子が描かれます。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5