## モームの人間の絆と時間
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時間と人間の成長
サマセット・モームの小説「人間の絆」は、主人公フィリップ・ケアリーの誕生から青年期までの約20年間を描いた教養小説です。この作品において、時間は単なる物語の経過を示すものではなく、登場人物たちの成長や変化、そして彼らが抱える人生の不確かさを浮き彫りにする重要な要素として機能しています。
フィリップは、幼い頃に両親を亡くし、足に障害を持つという苦難を背負いながら成長していきます。時間とともに、彼は様々な経験を通して自己を見つめ直し、自分自身の価値観や人生観を形成していきます。特に、叔父のウィリアム、画家としての道を諦めたストリックランド、自由奔放なミルドレッドといった人物との出会いは、彼の価値観に大きな影響を与え、彼を精神的に成長させていきます。
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時間と愛の変遷
「人間の絆」では、時間とともに変化していく愛の形態も描かれています。フィリップは、成長するにつれて様々な女性と出会い、恋に落ちます。しかし、時間とともに、彼の恋愛に対する考え方も変化していきます。
例えば、彼が若い頃に激しい恋心を抱いたミルドレッドは、彼にとって理想の女性像とはかけ離れた存在でした。時間とともに、彼はミルドレッドへの執着から解放され、より穏やかな愛情を抱くことができるようになります。
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時間と人生の不確実性
「人間の絆」は、人生における時間という概念の持つ不確実性を、読者に印象付ける作品でもあります。フィリップは、将来に対する明確な目標や展望を持つことなく、時間だけが過ぎていくことに不安を感じることがあります。
彼は様々な職業を転々とし、人生の目標を見つけるために苦悩します。この過程は、時間という有限な資源の中で、いかに生きるべきかという普遍的な問いを読者に投げかけています。