## モームの人間の絆とアートとの関係
フィリップの芸術に対する情熱と葛藤
「人間の絆」の主人公フィリップ・ケアリーは、幼い頃から絵画に強い憧れを抱き、画家になることを夢見ています。彼はパリで美術学校に通い、自由な雰囲気の中で創作活動に没頭します。しかし、才能の限界に直面し、自分が凡庸な画家であることを思い知らされます。
フィリップの芸術に対する情熱は、彼の人生における重要なテーマの一つです。彼は芸術に絶対的な価値を置き、人生の意味を見出そうとします。しかし、現実の厳しさに直面し、理想と現実のギャップに苦悩することになります。
芸術と人生の対比
モームは、フィリップの視点を通して、芸術と人生の対比を描写します。フィリップは当初、芸術は人生よりも高尚なものであり、芸術に没頭することで人生の苦しみから解放されると考えています。しかし、彼は次第に、芸術は人生から切り離されたものではなく、人生の一部であることを認識していきます。
フィリップは、パリの街角の風景や、そこで出会う人々の姿に心を動かされ、それらを絵画として表現しようとします。彼は、芸術は単なる技巧ではなく、人生に対する深い洞察と共感から生まれることを学んでいくのです。
モーム自身の芸術観
「人間の絆」は、モーム自身の半自伝的小説とも言われています。モーム自身も、若い頃に医学を志しながらも、作家としての道を選びました。彼は、この作品を通して、芸術家としての苦悩や喜び、そして芸術と人生の関係に対する自身の考えを表現していると言えるでしょう。
モームは、芸術は人生を豊かにするものであり、私たちに新たな視点を与えてくれると信じていました。しかし同時に、芸術は人生のすべてではなく、人生には芸術以外にも大切なものがたくさんあることも認識していました。