## モーパッサンのベラミを読む
作者について
ギ・ド・モーパッサン（Guy de Maupassant, 1850-1893）は、19世紀フランスの小説家です。自然主義文学の旗手エミール・ゾラの影響を受け、写実的な作風で知られます。代表作には『脂肪の塊』『ベラミ』『女の一生』などがあり、短編の名手としても名高いです。
作品概要
『ベラミ』（原題: Bel-Ami）は、モーパッサンの長編小説です。1885年に発表され、当時のフランス社会における野心、欲望、腐敗などを鋭く描いた作品として大きな反響を呼びました。主人公ジョルジュ・デュロワは、退役軍人で金も地位もない男ですが、持ち前の美貌と巧みな話術を武器に、パリの社交界を上り詰めていきます。
あらすじ
アルジェリア戦争から帰還したジョルジュ・デュロワは、パリで退屈な生活を送っていました。ある日、旧友のフォレスティエと再会し、新聞社「ラ・ヴィ・フランセーズ」の記者として働く機会を得ます。ジャーナリストとしての才能に恵まれないデュロワでしたが、持ち前の美貌と女性を口説き落とす才能を活かして、出世の階段を駆け上がっていきます。
登場人物
* **ジョルジュ・デュロワ（通称ベラミ）**: 本作の主人公。美貌と社交術を武器に、あらゆる手段を使って出世を目指す。
* **マドレーヌ・フォレスティエ**: フォレスティエの妻。知性と教養を兼ね備えた女性で、デュロワに記事の書き方を教え、彼の出世を陰ながら支える。
* **クロティルド・ド・マレル**: デュロワが最初に関係を持つ人妻。奔放な性格で、退屈な結婚生活を送っている。
* **シュザンヌ・ウォルテール**: 新聞社の社長夫人。デュロワの愛 mistress となり、彼の出世に重要な役割を果たす。
作品の魅力
* **当時のフランス社会の風刺**: モーパッサンは、ジャーナリズム、政界、社交界における人々の欲望、腐敗、偽善を鋭く描いています。
* **魅力的な悪漢**: 主人公デュロワは、倫理観に欠け、目的のためなら手段を選ばない人物として描かれています。彼の狡猾さと冷酷さ、そして成功への執念は、読者を嫌悪させると同時に、不思議な魅力を感じさせます。
* **心理描写の巧みさ**: モーパッサンは、登場人物たちの内面を繊細に描写し、彼らの行動の裏にある心理を浮き彫りにしています。特に、愛と欲望、野心と罪悪感の間で揺れ動くデュロワの心理描写は秀逸です。