モーパッサンのベラミの力
女たらしの才能
ジョルジュ・デュロワは、ハンサムで体格にも恵まれているものの、知性や教養、特別な能力は持ち合わせていません。彼を特徴づけるのは、むしろその並外れた「女たらしの才能」です。デュロワは、女性の心を掴む天性の魅力と、それを利用して自分の目的を達成しようとするしたたかさを持っています。彼は女性を口説く際に、計算高い駆け引きや巧みな言葉遣いを駆使し、時には嘘や欺瞞も厭いません。
社交界の力関係への適応力
デュロワは、当初は上流社会のしきたりや価値観に疎い田舎者として描かれています。しかし、彼は持ち前の観察眼と学習能力の高さで、社交界のルールを急速に吸収していきます。そして、その場にいる人間関係や力関係を見極め、自分に有利なように立ち回る術を身につけていきます。
野心と上昇志向
デュロワは、貧困から抜け出し、富と名声を得たいという強い野心を抱いています。彼は、そのために手段を選ばない冷酷さを持っています。女性を踏み台にすることに対しても、罪悪感や躊躇はほとんど見られません。
ジャーナリズムの力
当時のフランス社会において、ジャーナリズムは大きな影響力を持つようになっていました。デュロワは、その力を利用して、自分の社会的地位を築き上げていきます。彼は、文章の才能は持ち合わせていませんが、編集長であるマドレーヌ・フォレスティエの指導や、他のジャーナリストの記事の盗用などを通して、徐々にジャーナリストとしての地位を確立していきます。
時代の風潮
19世紀後半のフランスは、第二帝政から第三共和制への移行期にあたり、社会は大きな変動と不安定の中にありました。物質主義、享楽主義、道徳の退廃といった風潮が蔓延し、デュロワのような野心的な人間がのし上がっていく土壌が生まれていました。