モーパッサンのベラミの価値
価値1:19世紀末のフランス社会の写実的な描写
「ベラミ」は、19世紀末のフランス社会、特にその腐敗した側面を写実的に描いた作品として評価されています。主人公デュロワが出世していく舞台となるのは、ジャーナリズム、政界、金融界といった当時の権力構造と密接に関わる領域です。
デュロワは自身の美貌と巧みな女性関係を利用し、これらの世界を縦横無尽に渡り歩いていきます。その過程で、作品は当時の社会における金銭欲、権力欲、色恋沙汰などが渦巻く様を赤裸々に描き出しています。
例えば、デュロワが勤める新聞社は、読者の関心を煽るために事実を歪曲した記事を平気で掲載しますし、政治家は私腹を肥やすために権力を利用します。また、上流階級の人々は退屈な日常から逃れるために、スキャンダルや不倫に興じています。
価値2:人間の欲望と社会の虚偽を鋭く風刺
「ベラミ」は、単に当時の社会状況を描写するだけでなく、人間の欲望と社会の虚偽を鋭く風刺している点も重要な価値です。主人公デュロワは、野心家で倫理観に欠け、目的のためには手段を選びません。
彼は女性を「出世のための道具」としか見ておらず、次々と関係を持ちながら、利用価値がなくなるとあっさりと切り捨てていきます。
しかし、デュロワの周囲にいる人々もまた、彼と同様に欲望に忠実で、偽善に満ちています。彼らはデュロワの行為を非難しながらも、結局は彼を利用しようとします。
このように、「ベラミ」は、登場人物たちの姿を通して、人間の欲望の醜さと社会の欺瞞性を浮き彫りにしています。