モンテーニュのエセーの技法
エッセイにおける「私」という試み
モンテーニュのエッセイを特徴づける最も重要な要素は、「私」を主題とした大胆な試みです。
モンテーニュ以前のルネサンス期において、文筆家の多くは古代ギリシャ・ローマの模倣を目指し、個人的な内面を描くことは一般的ではありませんでした。しかし、モンテーニュは古代の著作から得た知識や教養を土台としながらも、それらを自身の中で消化し、思索の過程や変化、葛藤をありのままに描き出しました。
自由で自在な構成
モンテーニュのエッセイは、明確な結論や筋書きを持たず、自由な形で思考が展開されます。
一つのテーマから始まりながらも、関連する様々な話題へと脱線し、時には元のテーマに戻ることもあれば、そのまま別のテーマに移行することもあります。これは一見、散漫な印象を与えますが、実際にはモンテーニュの思考の軌跡を忠実に辿ることで、彼の思考の深淵に触れることができます。
多様な引用と対話
モンテーニュのエッセイには、古代ギリシャ・ローマをはじめとする多様な書物からの引用が豊富に散りばめられています。
彼はこれらの引用を単なる権威付けとして用いるのではなく、自身の思考の対話相手として位置づけています。
過去の偉人たちの言葉と対峙することで、自身の思考を深化させ、多角的な視点を得ることを目指しました。
率直で親密な語り口
モンテーニュのエッセイは、まるで友人への手紙のように、親しみやすく率直な文体で書かれています。
彼は自らの内面を隠すことなく、時にはユーモラスに、時には深刻に、自身の思考や感情、経験を赤裸々に語ります。
この親密な語り口は、読者にモンテーニュを身近に感じさせ、彼の思考を追体験しているかのような感覚を与える効果を持っています。