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モンテーニュのエセーの思想的背景

## モンテーニュのエセーの思想的背景

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ルネサンスの影響

モンテーニュのエセーは、16世紀のフランスにおけるルネサンスの影響を強く受けています。ルネサンス期には、中世のスコラ哲学が批判され、古代ギリシャ・ローマの文化が見直されました。 人間は神によって創造された被造物であると同時に、理性と意志を持ち、自ら世界を認識し行動する主体であるという、人間中心主義(ヒューマニズム)が台頭しました。

モンテーニュもまた、古代の哲学者、特にストア派のエッセイストであるセネカを愛読していました。セネカの思想は、理性によって情念を制御し、徳に従って生きることを重視するものでした。 モンテーニュはセネカの影響を受けながら、自己観察を通じて人間存在の本質を探求しようとしました。

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懐疑主義の影響

モンテーニュは、当時のフランスで流行していた懐疑主義の影響も受けていました。懐疑主義とは、人間の認識能力の限界を強調し、絶対的な真理や価値判断を疑う立場です。 当時のフランスでは、宗教改革によるカトリックとプロテスタントの対立が激化しており、絶対的な真理を主張する両者の対立が、懐疑主義を生み出す土壌となっていました。

モンテーニュ自身も、宗教対立を目の当たりにする中で、人間の不完全さや、多様な価値観の存在を認めざるを得ませんでした。 彼は、断定的な判断を避け、「Que sais-je?(我いかんぞ知る) 」という言葉に代表されるように、常に懐疑的な立場を保ちました。

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個人主義の萌芽

モンテーニュのエセーは、自己の内面を赤裸々に綴った、極めて個人的な著作です。 そこには、中世的な権威主義や、宗教的教条主義に囚われない、自由な精神が表現されています。 これは、後のヨーロッパ思想史において大きな影響力を持つことになる個人主義の萌芽と見ることができます。

モンテーニュは、エセーの中で、自分の肉体的な変化や、喜怒哀楽の感情、思索の過程などをありのままに描写しました。 それは、それまでの文学作品には見られなかった、新しい人間像を提示するものでした。

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