モンテスキューの法の精神の関連著作
ジャン・ボダンの「国家論」について
「国家論」は、フランスの政治思想家ジャン・ボダンによって1576年に出版された書物です。この書は、近代国家の主権概念を体系的に論じた最初期の著作として知られています。ボダンは、宗教改革期のフランスにおける混乱を背景に、国家の安定と秩序のために絶対的な主権の必要性を説きました。
ボダンは、主権を「国家の最高絶対かつ恒久的な権力」と定義し、それが分割不可能かつ譲渡不可能であることを強調しました。彼は、主権者が法律制定権、戦争と平和の決定権、官吏の任免権などの重要な権限を持つことを主張しました。また、ボダンは家族を国家に先立つ自然な共同体と捉え、家父長権を主権の原型と見なしました。
「国家論」は、モンテスキューの「法の精神」にも大きな影響を与えました。モンテスキューはボダンの主権概念を継承しつつ、それが恣意的な権力とならないよう、権力分立の原則を提唱しました。
トマス・ホッブズの「リヴァイアサン」について
「リヴァイアサン」は、イギリスの政治哲学者トマス・ホッブズが1651年に発表した著作です。この書は、自然状態における人間の闘争と、それを克服するための絶対的な主権の必要性を論じたものです。ホッブズは、イングランド内戦の経験を踏まえ、人間の理性と自然権に基づいて国家の起源と目的を説明しようとしました。
ホッブズは、自然状態においてはすべての人間が自己保存のためにあらゆる権利を持つと主張しました。しかし、この状態では共通の権力が存在しないため、「万人の万人に対する闘争」が生じ、社会は混乱に陥ると彼は考えました。この混乱を避けるために、人々は社会契約によって自然権の一部を放棄し、絶対的な主権を持つ国家に服従することを選択するとホッブズは説明しました。
ホッブズの絶対的な主権の概念は、モンテスキューの思想と対照的です。モンテスキューは、ホッブズの主張するような強力な主権は、個人の自由を脅かす可能性があると懸念を抱いていました。そのため、彼は権力分立の原則によって、主権を制限し、自由を保障しようと試みたのです。
ジョン・ロックの「統治二論」について
「統治二論」は、イギリスの哲学者ジョン・ロックが1689年に発表した政治思想書です。この書は、名誉革命を正当化する目的で書かれ、自然権、社会契約、抵抗権などを論じています。ロックは、人間は生まれながらにして自由と平等を有しており、生命、自由、財産といった自然権を持っていると主張しました。
ロックは、国家は人々の合意に基づいて形成され、その目的は個人の自然権を保護することにあると論じました。彼は、政府の権力は制限されるべきであり、もし政府が国民の権利を侵害するならば、国民は抵抗する権利を持つと主張しました。
ロックの思想は、モンテスキューの「法の精神」に大きな影響を与えました。特に、権力分立の原則、法の支配、個人の自由の重要性といった概念は、ロックの影響を強く受けています.