モンテスキューの法の精神に影響を与えた本
影響を与えた本:
ポリュビオス『歴史』
古代ギリシャの歴史と思想の巨人:ポリュビオス
モンテスキューの思想に大きな影響を与えた人物の一人に、古代ギリシャの歴史家ポリュビオスが挙げられます。ポリュビオスは紀元前2世紀に活躍し、ローマによる地中海世界征服を目撃した人物です。彼はその経験を踏まえ、壮大な歴史書『歴史』を著しました。
『歴史』に見る政体循環論と混合政体論
『歴史』の中でポリュビオスは、政体循環論と呼ばれる歴史観を展開しています。これは、人間の政治体制が、君主政→貴族政→民主政というサイクルを繰り返すというものです。それぞれの政体は、時間が経つにつれて腐敗し、次の段階へと移行していくと彼は考えました。
ポリュビオスは、この循環から逃れるためには、それぞれの政体の長所を取り入れ、短所を補い合う混合政体が必要であると主張しました。彼は、ローマが共和政期に繁栄を極めたのは、執政官(君主政)、元老院(貴族政)、民会(民主政)という三つの要素を組み合わせた混合政体を採用していたからだと分析しています。
モンテスキューへの影響:分権と抑制と均衡
モンテスキューは、ポリュビオスの政体循環論と混合政体論を深く研究し、自らの政治思想に取り入れました。彼は、権力が一箇所に集中すると腐敗が生じると考え、立法権、行政権、司法権の三権分立論を提唱しました。これは、ポリュビオスがローマで見た三つの要素を、それぞれの権力として独立させ、相互に抑制と均衡を図ることで、権力の濫用を防ぎ、自由を守ろうとしたものです。
歴史書から読み解く政治思想の系譜
ポリュビオスの『歴史』は、単なる歴史書ではなく、古代ギリシャにおける政治思想の精華を伝える重要な書物です。モンテスキューは、『歴史』を通して古代の政治思想を学び、近代政治思想の礎を築き上げたのです。