## モンテスキューのローマ人盛衰原因論の翻訳
モンテスキューの『ローマ人盛衰原因論』 (Considérations sur les causes de la grandeur des Romains et de leur décadence) は、1734年に匿名で出版されました。
ローマ史解釈における本書の位置づけ
本書は、古代ローマの建国から滅亡までを歴史的に考察し、その盛衰の原因を多角的に分析した歴史論です。マキャベリの『ディスコルシ』の影響を受けつつも、単なる政治論ではなく、社会構造、経済状況、軍事制度、宗教、風俗、地理的条件など、ローマ興亡に関わるあらゆる要因を総合的に検討した点に特色があります。
翻訳の課題と留意点
本書の翻訳には、歴史的知識、政治思想、哲学、法律など幅広い分野への理解が求められます。特に、18世紀フランス語の文体は難解であり、正確な意味を把握するには原文への深い洞察が不可欠です。
主要な訳語の選択とその背景
本書には、「vertu (徳)」、「corruption (腐敗)」、「esprit général (国民精神)」など、モンテスキューの思想を象徴する重要な概念が登場します。これらの訳語は、単に辞書的な意味に留まらず、当時の歴史的文脈や思想的背景を踏まえて、慎重に選択する必要があります。
訳文における解釈の問題
モンテスキューの文章は、皮肉や暗示を多分に含み、多義的な解釈を許容する側面があります。そのため、訳者は原文のニュアンスをできる限り忠実に再現しつつ、読者自身の解釈に委ねるべき部分と、注釈などを用いて明確な解釈を示すべき部分を適切に判断する必要があります。