モンゴメリの赤毛のアンに影響を与えた本
影響を与えた作品：『小さき婦人』
ルーシー・モード・モンゴメリの愛読書として知られる『小さき婦人』は、アメリカ人作家ルイーザ・メイ・オルコットによって1868年と1869年に2巻に分けて出版された長編小説である。南北戦争時代のアメリカを舞台に、マーチ家の4姉妹メグ、ジョー、ベス、エイミーの成長を、それぞれの個性と才能を対比させながら、繊細に描いた家族小説であり、少女小説の古典として、時代を超えて世界中で愛されている作品である。
モンゴメリは自身の作品を「小さき婦人」のカナダ版として構想していたことを公言しており、実際に『赤毛のアン』には『小さき婦人』から多くの影響が見受けられる。まず、孤児のアン・シャーリーとマーチ家の4姉妹という設定の類似点がある。どちらもそれぞれに個性的な少女たちが、友情や恋愛、家族の絆を通して成長していく姿が描かれている点が共通している。
アンの空想好きな性格や、作家を志す姿は、『小さき婦人』のジョーと重なる部分が多い。ジョーは、自分の作品を出版社に持ち込んだり、演劇を企画したりと、活発で想像力豊かな少女として描かれている。アンもまた、空想の世界に没頭し、物語を創作したり、詩を書いたりすることに情熱を燃やす様子が描かれている。
さらに、『赤毛のアン』には、『小さき婦人』へのオマージュともとれる描写が随所に見られる。例えば、アンがダイアナに間違えてワインを飲ませてしまうエピソードは、『小さき婦人』でメグがパーティで禁断のシャンパンを飲んでしまう場面を彷彿とさせる。また、アンが自分の空想の世界に浸り、周囲が見えなくなってしまう様子は、ジョーが自分の世界に閉じこもってしまい、家族と衝突する場面と重なるものがある。
このように、『赤毛のアン』は、『小さき婦人』から多大な影響を受けていることがわかる。モンゴメリは、オルコットの作品から少女たちの成長物語の描き方や、個性豊かなキャラクター設定、そして家族の温かさを表現する方法を学んだと言えるだろう。