## モリエールの人間嫌い の世界
アルソンの視点を通して描かれる社会
「人間嫌い」の主人公アルソンは、人間の偽善や欺瞞を嫌悪し、正直さや率直さを何よりも重んじる人物として描かれています。彼は社交界の慣習や、そこに生きる人々の表面的でうわべだけの付き合いを激しく嫌悪し、人間社会から距離を置こうとします。
彼の視点を通して、当時のフランスの上流社会における滑稽な人間模様が浮き彫りになっていきます。社交辞令や体面を気にするあまり、本心を隠して偽りの言葉を交わし合う人々。恋愛関係においても、打算や駆け引きが横行し、純粋な愛情を見出すことは難しい。アルソンは、そんな人々の姿を冷めた目で観察し、痛烈な言葉を浴びせます。
古典主義演劇の傑作
モリエールが生きた17世紀フランスは、ルイ14世の治世下、絶対王政の時代でした。演劇は宮廷文化の中心として栄え、モリエール率いる劇団も王の庇護を受けて活躍していました。
「人間嫌い」は、1666年に初演されたモリエールの代表作の一つです。韻文を用いた格調高い文語で書かれ、登場人物の心理描写や社会風刺に優れた、古典主義演劇の傑作として評価されています。
喜劇としての側面
「人間嫌い」は、人間の醜さを鋭く風刺した作品であると同時に、登場人物たちの滑稽な言動によって笑いを誘う喜劇でもあります。
アルソンは、正直者であることを貫こうとするあまり、周囲の人々を困惑させたり、怒らせたりします。彼の極端なまでの正直さは、時に滑稽に見え、笑いを誘う要素ともなっています。
また、アルソンを取り巻く登場人物たちも、それぞれに個性的な人物として描かれ、彼らの言動が作品の喜劇性を高めています。