## モリエールの人間嫌いの対称性
登場人物の関係性における対称性
「人間嫌い」には、登場人物たちの間に対称的な関係性が多く見られます。
* **アルセストとフィラント:** 主人公アルセストは人間を嫌悪し、正直さや高潔さを求める一方で、友人のフィラントは人間社会の欠点を受け入れ、柔軟に付き合っていくことを是としています。
* **アルセストとセリメーヌ:** アルセストは恋愛においても絶対的な誠実さを求めますが、彼が想いを寄せるセリメーヌは社交界に生きる女性であり、複数の男性に愛想を振りまいています。
* **アルマンドとアセスト:** アルセストの恋敵であるアルマンドは、社交界での地位や体裁を気にする典型的な貴族であり、アルセストとは対照的な価値観を持っています。
このように、登場人物たちはそれぞれの価値観や行動様式において対照的な関係にあり、これが劇全体の対称性を作り出す一つの要素となっています。
喜劇と悲劇の対称性
「人間嫌い」はジャンルとしては喜劇に分類されますが、主人公アルセストの悲劇的な側面も描かれている点が特徴です。
* **喜劇的要素:** 登場人物たちの滑稽な言動や、恋愛模様のもつれなどが笑いを誘います。特に、アルセストの極端な人間嫌いは、周囲の人々との対比によってコミカルに描かれています。
* **悲劇的要素:** 一方で、アルセストは自分の理想と現実のギャップに苦しみ、孤独を深めていきます。彼の正直さや高潔さは、皮肉にも彼自身を苦しめる結果となり、悲劇的な結末へと繋がっていきます。
このように、「人間嫌い」は喜劇と悲劇の要素が複雑に絡み合い、独特の緊張感を生み出しています。 登場人物たちの対称的な関係性と、作品全体を貫く喜劇と悲劇の対称性が、「人間嫌い」をより深みのある作品にしていると言えるでしょう。