モリエールの人間嫌い
人間嫌いの普遍的なテーマ
モリエールの戯曲「人間嫌い」は、17世紀フランスの上流社会を舞台にしながらも、人間の行動や欠点に関する普遍的なテーマを探求しており、時代を超えて共感を呼ぶ作品です。主人公アルセストは、人間社会に蔓延する偽善、欺瞞、利己主義に嫌悪感を抱き、正直さや高潔な道徳を強く求める人物として描かれます。
社会における偽善と欺瞞
アルセストの嫌悪の的となるのは、社交界における表面的でうわべだけの付き合い方が横行していることです。人々は本心とは裏腹にお世辞を言い合い、自分の利益のために他人を利用し、保身のために嘘をつくことに何の躊躇もありません。アルセストは、このような偽善的な行動を徹底的に嫌い、常に正直で率直な態度でいることを望みます。
理想と現実の葛藤
アルセストの理想主義的な性格は、彼自身の恋愛にも影を落とします。彼は、軽薄で社交的なセリーメーヌに恋をしますが、彼女の言動はアルセストの理想とはかけ離れたものでした。それでもアルセストは、セリーメーヌの本心は純粋であると信じ、彼女に自分の理想を押し付けようとします。
人間関係における妥協の難しさ
アルセストの妥協を許さない態度は、周囲の人々との摩擦を生み出し、彼自身を孤立させていきます。彼の友人フィラントは、人間社会で生きていくためにはある程度の妥協が必要であると説きますが、アルセストはそれを受け入れることができません。
人間の本質への風刺
モリエールは「人間嫌い」を通して、人間の本質を鋭く風刺しています。アルセストの極端な態度は滑稽に描かれることもありますが、彼の抱える苦悩や葛藤は、私たち自身の心に潜む闇を映し出す鏡でもあります。