## モリエールのタルチュフの周辺
タルチュフとは何か？
「タルチュフ」は、17世紀フランスの劇作家モリエールによって書かれた五幕構成の韻文喜劇です。原題は「タルチュフ、あるいは偽善者」であり、1664年に初めて上演されました。
作品のあらすじ
裕福なオルゴンは、敬虔な信者だと信じるタルチュフという男を家に迎え入れます。しかし、タルチュフは外面だけの偽善者で、オルゴンの財産と妻エルミールを狙っています。オルゴンの家族はタルチュフの本性を見抜き、彼の正体を暴こうとしますが、オルゴンのタルチュフへの心酔は深く、なかなか信じようとしません。最終的に、王の介入によってタルチュフは逮捕され、オルゴン一家は危機を脱するという物語です。
執筆の背景と上演禁止
モリエールは「タルチュフ」を執筆するにあたって、当時のフランス社会に蔓延していた宗教的偽善を風刺することを目的としていました。ルイ14世の治世下、フランスではカトリック教会の影響力が強く、一部の聖職者や信者の間で偽善的な行動が見られました。モリエールは、こうした社会問題を鋭く批判し、人々に警鐘を鳴らそうとしたのです。
しかし、「タルチュフ」は初演後すぐに、その内容が宗教を冒涜するものだとして、パリ高等法院や聖体奉仕会などの宗教団体から激しい非難を浴び、上演禁止処分を受けてしまいます。モリエールは「タルチュフ」を擁護し、内容の修正を重ねながら上演許可を求め続けました。そして、1669年、ついにルイ14世の許可を得て、「タルチュフ、あるいは偽善者」として正式に上演が認められることとなりました。
作品のテーマ
「タルチュフ」は、宗教的偽善をテーマとした作品であると同時に、人間の愚かさや盲信の危険性を描いた作品でもあります。オルゴンは、タルチュフの巧みな話術や外面上の敬虔さに騙され、家族の言葉にも耳を貸そうとしません。彼の盲信ぶりは滑稽でありながらも、同時に恐ろしさを感じさせます。モリエールは、この作品を通して、人間は誰しも騙される可能性があり、物事を批判的に見極めることの重要性を訴えていると言えるでしょう。
作品の影響
「タルチュフ」は、モリエールの代表作の一つとして、今日まで世界中で上演され続けている古典作品です。その風刺精神は時代を超えて共感を呼び、宗教的偽善だけでなく、現代社会における様々な問題にも当てはまります。「タルチュフ」は、単なる喜劇を超えた、人間の普遍的なテーマを描いた傑作として、後世に大きな影響を与え続けています。