## モアのユートピアを面白く読む方法
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時代背景を理解する
トマス・モアが『ユートピア』を執筆したのは16世紀初頭、ヨーロッパは大航海時代を迎え、世界観が大きく変容しつつあった時代でした。
未知の世界の情報がもたらされる一方で、国内では宗教改革や資本主義の台頭といった社会不安も広がっていました。
このような時代背景を理解した上で読むと、『ユートピア』に込められたモアの理想や風刺、当時の社会に対する批判などがより深く読み取れるようになります。
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「ユートピア」の構造に注目する
『ユートピア』は、大きく分けて二つの部分から構成されています。
前半部分は、航海士ヒュスローデェスの口を通して当時のヨーロッパ社会の矛盾や問題点が語られます。
後半部分は、理想郷「ユートピア」の制度や人々の暮らしぶりが詳細に描写されます。
この対比構造に注目することで、モアが当時の社会をどのように見ていたのか、そして真に理想とする社会とはどのようなものだったのかが見えてきます。
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他のユートピア思想と比較する
『ユートピア』は、プラトンの『国家』をはじめとする古典的なユートピア思想の影響を受けています。
しかし、モアは単に過去の思想を模倣するのではなく、当時の社会状況や自身の思想を反映させて独自のユートピア像を描き出しています。
プラトンなどの古典的なユートピア思想と比較することで、『ユートピア』独自の魅力や革新性が浮かび上がってきます。
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風刺文学として楽しむ
『ユートピア』は、理想郷を描いた作品であると同時に、当時のヨーロッパ社会に対する痛烈な風刺文学でもあります。
ユートピアの制度や人々の暮らしぶりは、一見すると理想的に見えますが、その裏には皮肉や風刺が込められていることが少なくありません。
例えば、ユートピアでは金銀財宝は価値のないものとされ、トイレの便器に利用されています。
これは、当時のヨーロッパ社会における富への執着に対する痛烈な批判となっています。
このように、『ユートピア』を風刺文学として読み解くことで、モアが真に伝えたかったメッセージが見えてくるはずです。
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現代社会との関連を考える
『ユートピア』で描かれた理想と現実のギャップは、500年以上経った現代社会においても通じるものがあります。
貧富の格差、宗教対立、環境問題など、『ユートピア』で提起された問題は、形を変えながらも現代社会に受け継がれています。
『ユートピア』を読むことを通じて、私たちが生きる現代社会の問題点や課題、そして未来に向けた希望について考えるきっかけが得られるかもしれません。