## モアのユートピアの面白さ
### 理想郷の提示と現実社会への批判
「ユートピア」の最大の魅力は、何と言ってもモアが提示する理想社会の描写にあります。
私有財産の廃止、労働の共有、教育の重視、宗教の自由など、当時のヨーロッパ社会の常識とは全く異なる社会システムが詳細に語られます。
モアは、貨幣制度や私有財産といった制度が人間の貪欲さを助長し、社会に貧富の差や犯罪を生み出すと考えていました。
ユートピアではこれらの制度を廃止することで、人々の平等と幸福を実現しようとしています。
### 風刺と皮肉に満ちた筆致
「ユートピア」は単なる理想社会の青写真ではなく、鋭い風刺と皮肉に満ちた作品でもあります。
例えば、ユートピアの人々が金銀を軽蔑し、子供のおもちゃや囚人の鎖に使うという描写は、富を追い求める当時のヨーロッパ社会への痛烈な批判となっています。
また、戦争を正当化する論理や、宗教の名の下に行われる偽善を風刺する箇所も見られます。
モアは理想と現実の対比を鮮やかに描き出すことで、読者に自らの社会について深く考えさせようとしました。
### 対話形式という手法と隠されたメッセージ性
「ユートピア」は、モア本人と、架空の人物である航海者ヒュスローデの対話形式で書かれています。
モアはヒュスローデを通してユートピアの社会制度や文化を語り、読者に驚きと共感を呼びかけます。
しかし、モア自身がユートピアの制度を完全に肯定しているわけではありません。
むしろ、対話形式を用いることで、読者に様々な角度からユートピアについて考えさせようという意図が読み取れます。
ユートピアの制度の中には、奴隷制や厳しい規律といった、現代の視点からは問題視されるものも含まれています。
モアはこれらの要素を敢えて盛り込むことで、読者に理想社会の実現可能性や、その代償について問いかけていると言えるでしょう。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。