## モアのユートピアの原点
トーマス・モアの人物像
トーマス・モア(1478-1535)は、イングランドの法律家、思想家、政治家であり、ヘンリー8世の側近として活躍しました。彼は古典文学、特にプラトンの著作に造詣が深く、人文主義者としても知られていました。敬虔なカトリック教徒であったモアは、当時の社会における腐敗や貧困などの問題に心を痛めていました。
執筆の背景
「ユートピア」は、1515年から1516年にかけて執筆され、1516年に初版が出版されました。当時のヨーロッパは、大航海時代が始まり、新しい土地や文化との接触が盛んになっていました。このような時代背景の中、モアは、現実の社会とは異なる理想的な社会を描いた「ユートピア」を執筆しました。
影響を与えた思想や書物
モアは、「ユートピア」を執筆するにあたって、様々な思想や書物から影響を受けています。特に、プラトンの「国家」は、「ユートピア」の社会構造や政治体制に大きな影響を与えています。また、アメリゴ・ヴェスプッチの「新世界」などの旅行記は、「ユートピア」の地理的な設定や文化の描写に影響を与えたと考えられています。
「ユートピア」の構成
「ユートピア」は、2つの部分から構成されています。第1部は、モアと航海者ヒュソードルスとの対話形式で、当時のイングランド社会の問題点や理想的な社会のあり方について論じられています。第2部は、ヒュソードルスによって語られるユートピア島の詳細な描写がされています。この構成により、現実の社会と理想の社会を対比させ、読者に問題提起を投げかけている点が特徴です。