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モアのユートピアの光と影

## モアのユートピアの光と影

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平等社会の実現

モアが「ユートピア」で描いた理想社会の根幹は、私有財産の否定と財産の共有に基づく平等社会の実現にあります。

ユートピアでは、金銭や私有財産を完全に否定し、 全ての市民が平等に労働し、生活に必要なものを共有することで、貧富の差や社会的な不平等を根絶しています。

これは、当時のヨーロッパ社会が抱えていた、封建制度や階級社会における深刻な経済格差、貧困、社会不安といった問題に対する、モアなりの解と言えるでしょう。

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労働の義務と管理社会

ユートピアでは、市民は皆、平等に労働する義務を負います。

農業を基本としつつ、必要に応じて他の職業にも従事します。

労働時間は6時間と短く設定されていますが、これは裏を返せば、市民の生活は厳格に管理され、自由意志による職業選択や労働時間の決定は許されないことを意味します。

また、市民は常に監視下に置かれ、怠惰や贅沢といった行為は厳しく罰せられます。

このような社会システムは、個人の自由や自律性を制限し、管理社会を生み出す可能性を孕んでいると言えるでしょう。

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宗教的寛容と例外

ユートピアでは、信仰の自由が認められており、人々は各自が信じる宗教を信仰することが許されています。

これは、当時のヨーロッパで熾烈な宗教対立や迫害が横行していたことを考えると、極めて先進的な思想と言えるでしょう。

しかし、無神論者に対しては、死後の世界や神の審判を信じないことから、道徳的に問題があるとみなされ、公職への就任を禁じられています。

これは、完全な宗教的寛容とは言えず、思想統制の一種と解釈することも可能です。

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戦争と奴隷制度

平和を愛するユートピアの市民ですが、自衛のための戦争は容認され、状況によっては積極的に他国との戦争に踏み切ることもあります。

また、戦争捕虜や重大な罪を犯した市民は奴隷として扱われます。

奴隷は市民の代わりに過酷な労働に従事させられ、その境遇は厳しいものとなっています。

このような事実は、ユートピアが理想的な平和主義国家としての一面だけでなく、現実主義的な側面や、現代の倫理観からすると問題視される側面も持ち合わせていることを示しています。

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