モアのユートピアに影響を与えた本
プラトンの「国家」
トーマス・モアが1516年に発表した「ユートピア」は、架空の理想社会を描写した作品であり、ルネサンス期のヒューマニズムと社会批判を色濃く反映した作品として知られています。モアの思想に大きな影響を与えた作品の一つとして、古代ギリシャの哲学者プラトンが著した「国家」が挙げられます。
理想社会の探求
プラトンの「国家」は、ソクラテスを語り手として、正義とは何か、そして理想的な国家のあり方を探求していく対話篇です。作中では、統治者である「哲人王」、彼らを支える「守護者」、そして生産活動に従事する「生産者」の三つの階級からなる理想国家が提示されます。
共通の財産と教育
「国家」で描かれる理想社会では、守護者階級は私有財産や家族を持つことを禁じられ、共同生活を営みながら、国家と共同体の利益のために尽くす存在として描かれています。また、男女を問わず、資質のある者が教育を受け、統治者となる道が開かれています。
影響と差異
モアの「ユートピア」もまた、私有財産制の廃止や共同生活、男女平等教育といった要素が描かれている点で、「国家」の影響を見て取ることができます。両作品とも、当時の社会における格差や不正に対する批判を背景に、理想的な社会システムを通じて解決策を探ろうとする姿勢が共通しています。
独自の社会構想
しかし、「ユートピア」は単に「国家」を模倣した作品ではありません。モアは、プラトンの思想を土台としながらも、宗教的寛容、労働の義務、民主的な選挙制度など、独自の要素を加えることで、より現実的で実現可能な社会モデルを提示しようと試みています。
「国家」は、「ユートピア」を理解する上で欠かせない先行作品と言えるでしょう。