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モアのユートピアが扱う社会問題

モアのユートピアが扱う社会問題

社会問題1:私有財産制度

モアは当時のイングランド社会における最大の問題点として、私有財産制度を挙げます。彼は、金銭欲や所有欲が人間の堕落の根源だと考えており、人々が私有財産を追い求めるあまり、貧困、犯罪、社会不安が生じていると批判しました。ユートピアでは、貨幣経済や私有財産を完全に廃止し、共有財産制を採用することで、これらの問題を根本から解決しようと試みます。

社会問題2:労働の不平等

当時のイングランドでは、一部の貴族や富裕層が労働から解放され贅沢な暮らしを楽しむ一方で、大多数の人々は過酷な労働に従事し、貧困から抜け出せない状況でした。モアは、このような労働の不平等を不条理だと考え、ユートピアでは、全ての人々が平等に労働する義務を負う社会制度を構想しました。

ユートピアでは、農業を基盤とした社会が形成されており、市民は皆、1日6時間の労働を課せられます。これは、一部の人々に労働が集中することを防ぎ、全ての人々がゆとりある生活を送れるようにするための工夫でした。

社会問題3:戦争と領土的野心

モアは、当時のヨーロッパ社会における戦争の頻発と、国家間の強欲な領土拡張競争を批判しました。ユートピアは、戦争をできる限り回避し、平和的な外交手段によって国際関係を構築することを重視する社会として描かれています。

ユートピアは、自衛のための軍事力は保持していますが、侵略戦争や領土拡張のための戦争は決して行いません。また、戦争が避けられない場合でも、捕虜を奴隷にすることはなく、人道的な扱いをすることを原則としています。

社会問題4:宗教的不寛容

モアが生きた時代は、ヨーロッパで宗教改革が勃興し、カトリックとプロテスタントの対立が激化していた時代でした。モア自身は敬虔なカトリック教徒でしたが、ユートピアでは、宗教の自由を認め、異なる宗教間の共存を可能にする社会モデルを提示しています。

ユートピアでは、特定の宗教を信仰する義務はなく、無神論者も存在します。しかし、あらゆる宗教は、唯一絶対の創造神の存在を認めるという共通の教義を持つことが求められます。これは、宗教対立による社会の分裂を防ぎ、宗教的な寛容を促進するための工夫でした。

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