## モアのユートピア
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社会制度の探求
トマス・モアによる「ユートピア」は、架空の理想社会を描写することで、当時のヨーロッパ社会の抱える問題点や理想的な社会制度について考察した作品です。作中では、語り手であるヒューバート・ギルピンと、航海者ラファエル・ヒュトロダエウスの対話を通して、ユートピア島における社会制度が詳細に語られます。
ユートピア社会の特徴として、私有財産の否定と共有制の採用が挙げられます。人々は皆平等であり、労働の義務を負う一方で、生活に必要なものは全て共同体から支給されます。貨幣経済は存在せず、金銀などの貴金属は軽蔑の対象とされています。
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労働と余暇のあり方
ユートピアでは、農業が重視され、全ての市民は一定期間、農村での労働に従事します。都市と農村の住民は定期的に交代することで、労働の偏りを防ぎ、誰もが労働の尊さを理解するよう促されています。
労働時間は1日6時間と短く、残りの時間は勉学や芸術活動など、自らの興味関心に基づいた活動に費やすことができます。このような余暇の有効活用は、市民の知性と教養を高め、幸福な生活の実現に繋がると考えられています。
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宗教と寛容
ユートピアでは、様々な宗教が認められており、信仰の自由が保障されています。無神論者も存在しますが、彼らもまた社会の一員として受け入れられています。
ただし、来世を信じない人や、魂の不滅を否定する人は、公職に就くことはできません。これは、彼らが現世での享楽のみを追求し、社会全体の利益を損なう可能性があるとユートピアの人々が考えているためです。
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統治と戦争
ユートピアは、選挙によって選ばれた代表者によって統治される共和制を採用しています。王や貴族は存在せず、市民が政治に参加する権利を持っています。
平和を愛するユートピアの人々は、戦争をできる限り避けることを原則としています。しかし、自衛のためや、同盟国を守るためには、やむを得ず武力行使を行うこともあります。