メンガーの国民経済学原理を読む前に
経済学史の基礎知識を持っていると、より深く理解できます。
カール・メンガーは、ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズやレオン・ワルラスと並んで、19世紀後半の限界革命の中心人物として知られています。 彼の主著『国民経済学原理』は、近代経済学の基礎を築いた重要な著作です。 この本をより深く理解するためには、彼がどのような時代背景の中で、どのような問題意識を持ってこの本を書いたのかを知る必要があります。
当時の経済学の状況、特に古典派経済学について知っておくことは重要です。
メンガーは、アダム・スミスやダヴィッド・リカードといった古典派経済学の考え方に批判的で、独自の価値論を展開しました。古典派経済学では、労働価値説に基づいて財の価値を説明していましたが、メンガーはこれを否定し、財の価値は人間の主観的な評価によって決まると主張しました。つまり、人々がその財をどれだけ必要としているか、どれだけ欲しがっているかによって価値が決まるということです。これは限界効用理論と呼ばれるようになり、近代経済学の基礎となりました。
本書で展開される限界効用理論について、事前に概要を掴んでおくと理解がスムーズになります。
限界効用理論は、財の価値はその財の追加的な一単位がもたらす満足度(限界効用)によって決まるとする考え方です。 メンガーは、この限界効用を用いて、価格や交換、分配といった経済現象を説明しようとしました。 この理論は、後の経済学者たちに大きな影響を与え、現代のミクロ経済学の基礎となっています。
抽象的な議論が多いことを踏まえ、根気強く読み進める心構えが必要です。
『国民経済学原理』は、現代の経済学の教科書に比べると、抽象的な議論が多く、数式もほとんど用いられていません。そのため、読解には根気が必要となります。 しかし、メンガーの明快な文章と論理展開は、現代の読者にとっても十分に理解可能です。