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メンガーの国民経済学原理の機能

## メンガーの国民経済学原理の機能

### 経済学における「主観的価値」の確立

メンガーの『国民経済学原理』(1871年)は、経済学における限界革命のさきがけとなった重要な著作として知られています。本書の最も重要な機能の一つは、経済的価値の源泉に関する従来の見解を覆し、「主観的価値」の概念を確立したことです。

当時の支配的な経済学派であった古典派経済学は、労働価値説に基づき、財の価値はそれを生産するために投下された労働量によって決まると考えていました。しかしメンガーは、財の価値はそれを必要とする主体にとっての主観的な評価によって決まると主張しました。つまり、同じ財であっても、それを必要とする人の状況や欲求によって、その価値は異なるということです。

メンガーは、水を例に挙げ、その価値が状況によって大きく異なることを示しました。砂漠で喉の渇きを癒すための水は、ありふれた場所ではほとんど価値のない水よりもはるかに高い価値を持つでしょう。これは、水の客観的な性質ではなく、それを必要とする人の主観的な評価によって価値が決まることを示しています。

### 経済現象の「限界」分析の導入

もう一つの重要な機能は、「限界効用」の概念を導入し、経済現象を「限界」の視点から分析する手法を確立したことです。限界効用とは、財を1単位追加的に消費することによって得られる効用の増加分を指します。

メンガーは、財の価値は、その財の総量ではなく、追加的に消費される1単位の限界効用によって決まると主張しました。人は、財を消費するほど、追加的に得られる効用は減少していきます。例えば、喉が渇いている人が水を飲むとき、最初の1杯の水は大きな満足感を与えますが、2杯目、3杯目と飲むにつれて、追加的に得られる満足感は徐々に減少していくでしょう。

この限界効用の概念は、価格決定のメカニズムを説明する上でも重要な役割を果たします。人は、財の価格が自分の感じる限界効用を上回るときは購入せず、下回るときは購入します。つまり、需要と供給が均衡する価格とは、消費者の限界効用と一致する価格ということになります。

### 経済学の方法論への貢献 -「方法論的個人主義」の提唱

さらに、メンガーは経済学の研究方法として、「方法論的個人主義」を提唱しました。これは、経済現象を個人の行動とその結果の相互作用として理解しようとする考え方です。

彼は、社会や国家などの集団は、個人の集合体として捉えるべきであり、集団自体に意思や目的があるわけではないと考えました。経済現象を理解するためには、個々の主体の行動原理や意思決定プロセスを分析することが重要であると主張しました。

この方法論的個人主義は、後のオーストリア学派経済学の中核的な考え方のひとつとなり、現代経済学においても重要な影響を与え続けています。

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