## メンガーの国民経済学原理の対極
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歴史主義経済学の隆盛
カール・メンガーの『国民経済学原理』(1871年) は、古典派経済学の限界分析を批判し、限界効用理論に基づいた新しい経済学体系を構築しようとしました。これは、当時のドイツ歴史学派が支配的であったドイツ語圏の経済学界において、大きな挑戦でした。
歴史学派は、経済現象を歴史的・社会的な文脈の中で理解することを重視し、抽象的な理論モデル構築に反対しました。彼らは、経済理論は各国の歴史的・制度的な特殊性を考慮した上で構築されるべきだと主張しました。
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リストの『国民経済学』
フリードリヒ・リストの『国民経済学』(1841年) は、歴史主義経済学の代表的な著作として挙げられます。リストは、イギリスの自由貿易政策が、後発国の工業化を阻害していると批判し、保護貿易政策の必要性を主張しました。
彼は、一国経済の発展段階に応じて、適切な経済政策は異なると考えました。そして、後発国は、国内産業を保護し、育成するために、保護貿易政策を採用する必要があると主張しました。
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シュモラーとドイツ歴史学派
グスタフ・フォン・シュモラーは、19世紀後半から20世紀初頭にかけてドイツ歴史学派を主導しました。彼は、経済学は倫理学や歴史学と密接に関連する社会科学であると主張し、経済現象を理解するためには、歴史的・制度的な分析が不可欠だと考えました。
シュモラーは、大規模な統計調査や歴史資料の分析を通じて、経済現象の背後にある因果関係を明らかにしようとしました。彼はまた、社会政策の重要性を強調し、労働者保護や社会保障制度の充実を訴えました。
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ヴェーバーと社会経済学
マックス・ヴェーバーは、社会学の創始者の一人として知られていますが、経済学にも大きな影響を与えました。彼は、経済現象を理解するためには、宗教や倫理といった文化的要因を考慮する必要があると主張しました。
彼の代表作『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(1904-1905年) では、プロテスタントの倫理観が、資本主義の発展に重要な役割を果たしたと論じました。
歴史主義経済学は、20世紀初頭には、ドイツ語圏の経済学界で支配的な地位を占めていました。しかし、第一次世界大戦後、その影響力は徐々に低下していきます.