メンガーの国民経済学原理に影響を与えた本
ゴッセンの法則
カール・メンガーの『国民経済学原理』（1871年）は、近代経済学、特にオーストリア学派に大きな影響を与えた重要な作品です。メンガー自身はこの作品が完全に独自のアイデアであると主張していましたが、その思想の発展に影響を与えた、以前の著作がいくつか存在します。その中でも特に影響力があったと考えられるのが、ヘルマン・ハインリッヒ・ゴッセンの『人間の交換とそれに伴う人間の行動の法則の展開』（1854年）です。ゴッセンの著書は、出版当時はほとんど注目されませんでしたが、メンガーはこの本を発見し、その重要性を認めました。
ゴッセンの限界効用理論
ゴッセンの本のメンガーの思想への影響は大きいものがあります。ゴッセンの最も重要な貢献は、限界効用逓減の法則を明確に述べたこと、すなわち財やサービスの消費量が増加するにつれて、その財やサービスの追加単位から得られる満足度（すなわち、限界効用）は低下するというものです。メンガーはこの概念を取り入れ、主観的価値の理論の基礎としました。メンガーは、財の価値はその効用、すなわち個人がそれを消費することから得られる満足度によって決まると主張しました。
ゴッセンは、希少な資源の配分における限界効用の重要性も認識していました。彼は、個人は自分の効用を最大化するために、さまざまな財やサービスに支出を配分すると主張しました。言い換えれば、個人は、消費する最後の単位の限界効用がすべての財において等しくなるまで、支出を調整します。この考え方は、後にメンガーとその信奉者によって発展した限界効用理論の中心となりました。
ゴッセンの影響
メンガーはゴッセンの先見の明のある洞察を認め、彼の著書でゴッセンに敬意を表しました。ゴッセンの限界効用と経済的意思決定におけるその役割に関する分析は、メンガー自身の経済思想の枠組みを提供しました。メンガーがゴッセンの概念を洗練させ、拡大したことは事実ですが、ゴッセンの影響は、『国民経済学原理』で提示された主観的価値と限界分析に対するメンガーの重視に明らかです。
要約すると、ヘルマン・ハインリッヒ・ゴッセンの『人間の交換とそれに伴う人間の行動の法則の展開』は、カール・メンガーの経済思想に大きな影響を与えました。ゴッセンの限界効用逓減の法則に関する先駆的な研究、そして経済的意思決定におけるその重要性を認識したことは、メンガー自身の主観的価値の理論と限界効用理論の発展に役立ちました。メンガーはゴッセンの功績を認め、彼の著書を通じて、ゴッセンのアイデアは後の経済学者の世代に影響を与え、近代経済思想の進歩に貢献しました。