メンガーの国民経済学原理が受けた影響と与えた影響

メンガーの国民経済学原理が受けた影響と与えた影響

カール・メンガーはオーストリア学派経済学の創設者として知られ、その著作『国民経済学原理』は経済学における価値理論、財の理論、および市場の原理に関する基礎を築きました。メンガーが形成した思想は、多くの学者や経済学の学派に影響を与えたばかりでなく、彼自身も先行する経済学者たちの理論に大きく影響を受けました。この記事では、メンガーの国民経済学原理がどのようなものから影響を受け、またそれが後の経済学にどのように影響を与えたかについて考察します。

メンガーが受けた影響

メンガーの経済学は、クラシック経済学、特にアダム・スミスやデイヴィッド・リカードの労働価値説から一線を画すものでした。しかし、彼らの経済学、特に市場メカニズムや競争の概念に関する考え方は、メンガーにとって重要な基盤を提供しました。また、メンガーはフランスの経済学者ジャン＝バティスト・セイの供給と需要に関する理論からも影響を受け、これをさらに発展させることとなります。

メンガーの価値理論は、主観的価値理論の先駆者とも言えるヘルマン・ゴセンのマージナルユーティリティ（限界効用）理論にも影響を受けました。ゴセンの理論を基に、メンガーは財の価値はその財が満たす欲求の強さによって決まるという考えを更に発展させました。

メンガーが与えた影響

メンガーの『国民経済学原理』は、経済学における方法論的個人主義と主観的価値理論の基礎を築きました。これは後にオーストリア学派経済学の中核をなす概念となり、特にルートヴィヒ・フォン・ミーゼスやフリードリヒ・ハイエクなどの学者によって発展されました。ミーゼスとハイエクは、メンガーの理論を基に、市場の自発的秩序や社会主義計画経済の計算問題に関する重要な貢献をしました。

さらに、メンガーの思想は新古典派経済学の発展にも影響を与え、特にウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズやレオン・ワルラスなどのマージナル革命に参加した経済学者たちとの共通点を見いだすことができます。これらの学者は、メンガーと同様に、価値と価格が個々の利用者の限界効用に基づいて決定されるという考えを提唱しました。

メンガーの理論はまた、経済学における時間と情報の役割に関する理解を深めるきっかけともなりました。このアプローチは、特に市場の情報伝達機能や期待形成の分析において、後の経済学者たちによってさらに発展されました。

結論として、カール・メンガーの『国民経済学原理』は、経済学におけるいくつかの根本的な転換点を提供しました。彼の理論は、クラシック経済学からの影響を受けつつも、それを大きく超える新たな方向性を示しました。そして、その思想はオーストリア学派のみならず、新古典派経済学やその他の多くの経済学の分野において大きな影響を与え続けています。