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メンガーの国民経済学原理から学ぶ時代性

## メンガーの国民経済学原理から学ぶ時代性

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オーストリア学派の誕生と時代背景

カール・メンガーの主著『国民経済学原理』が出版された1871年は、経済学にとっても、そして世界にとっても大きな転換期に位置していました。古典派経済学が支配的であった時代に、メンガーは全く新しい経済学の体系を提示し、それが後のオーストリア学派の礎となったのです。

当時のヨーロッパは産業革命の真っただ中。大量生産、工場制機械工業の隆盛、そして都市部への人口集中など、経済構造は大きく変化していました。古典派経済学が重視した客観的な価値や労働価値説は、このような新しい時代にそぐわなくなっていたのです。

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主観的価値論と限界効用理論

メンガーは、このような時代の変化を鋭く捉え、『国民経済学原理』の中で、経済現象の根底にあるのは人間の主観的な価値判断であると主張しました。財の価値は、それが労働によってどれだけ生産されたかではなく、それを必要とする人にとってどれだけ有用であるか、つまり主観的な評価によって決まるという「主観的価値論」を打ち出したのです。

さらに、財の価値はその人がどれだけその財を持っているか、つまり「限界」によっても変化すると指摘しました。ダイヤモンドが水よりも高価なのは、ダイヤモンドの全体量が少ないからではなく、人々が既に多くの水を保有しているため、追加的に得られる満足度(限界効用)がダイヤモンドの方が高いからであると説明しました。これが限界効用理論です。

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方法論的個人主義と自由主義

メンガーの経済学の特徴は、主観的価値論と限界効用理論だけにとどまりません。彼は経済現象を分析する上で、個人を基本単位とする「方法論的個人主義」を重視しました。社会や国家といった集団は、あくまで個人の集合体であり、その行動は個人の選択の結果として理解されるべきだと考えたのです。

このような個人主義的な視点は、当時のヨーロッパで台頭しつつあった社会主義に対するアンチテーゼでもありました。メンガーは、個人の自由な経済活動を阻害する国家による介入を批判し、自由放任主義を擁護しました。

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時代を超えて

メンガーの『国民経済学原理』は、出版当初こそ大きな反響を得ることはありませんでしたが、やがて多くの経済学者たちに影響を与えるようになり、現代経済学の基礎を築く重要な役割を果たしました。現代においても、行動経済学やゲーム理論など、メンガーの思想を継承した研究は進化し続けています。

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