メルヴィルの白鯨を読む前に
メルヴィルの生涯と時代について学ぶ
「白鯨」をより深く理解するためには、作者であるハーマン・メルヴィルの人生と、彼が作品を書いた19世紀半ばのアメリカの時代背景を知ることが不可欠です。メルヴィルは1819年にニューヨークで裕福な商家に生まれましたが、10代の頃に家業が傾き、苦難を経験しました。これらの経験は、後の彼の作品に大きな影響を与えています。
メルヴィルは20歳になる前に船乗りとして働き始め、捕鯨船にも乗船しました。この時の経験が、「白鯨」のリアリティと深みに大きく貢献しています。船上での過酷な労働、鯨との壮絶な戦い、閉鎖的な空間での人間関係など、メルヴィル自身が体験したからこそ描ける生々しい描写が作品の魅力の一つです。
さらに、「白鯨」が書かれた19世紀半ばのアメリカは、産業革命や西部の開拓が進み、経済的にも社会的にも大きな変化の渦中にありました。このような時代背景も、「白鯨」に描かれる人間の野心や欲望、自然との対峙といったテーマを理解する上で重要となります。
19世紀の捕鯨について調べる
「白鯨」の中心となる捕鯨は、当時のアメリカにとって重要な産業でしたが、現代人にとっては馴染みの薄い世界です。小説をより深く理解するためには、19世紀の捕鯨についてある程度の知識を身につけておくことをお勧めします。
例えば、当時の捕鯨船の構造や航海の様子、鯨油の用途、鯨を捕獲する方法、船員たちの生活などについて調べてみると、小説の世界がより鮮やかにイメージできるようになるでしょう。また、捕鯨が環境に与えた影響や、鯨と人間の複雑な関係について考えることも重要です。
インターネットや図書館で資料を探したり、博物館で捕鯨に関する展示を見学したりするのも良いでしょう。「白鯨」を読む前に、19世紀の捕鯨について少しでも知識を深めておくことで、物語への没入感が高まります。
旧約聖書とギリシャ神話に親しむ
「白鯨」には、旧約聖書やギリシャ神話からの引用や象徴が数多く登場します。これらの要素は、物語のテーマや登場人物の心理を理解する上で重要な役割を果たしています。
例えば、白鯨モビー・ディックは、旧約聖書の怪物レビヤタンや、ギリシャ神話の海の怪物ケートスなど、様々な神話に登場する巨大な海の生物と結びつけられています。また、主人公エイハブ船長の執念は、旧約聖書の預言者ヨナの物語や、ギリシャ神話の英雄アキレウスの復讐譚を彷彿とさせます。
「白鯨」を読む前に、旧約聖書やギリシャ神話の主要なエピソードや登場人物についてある程度知っておくことで、物語の奥深さをより深く味わうことができます。聖書や神話の解説書を読んだり、関連する映画や絵画を鑑賞したりするのも良いでしょう。