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メルヴィルのビリー・バッドの話法

## メルヴィルのビリー・バッドの話法

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語り手の視点

メルヴィルの『ビリー・バッド』は、全知的な語り手によって語られます。語り手は、登場人物たちの思考や感情だけでなく、物語の背景や歴史的文脈についても深い知識を持っています。

例えば、ビリーが「ハンサム」(handsome)号から「ベレロフォン」(Bellipotent)号に移された時の描写を見てみましょう。「ハンサム」号の船員たちの間では、ビリーは「ベイビー・バッド」(Baby Budd)と呼ばれ可愛がられていましたが、「ベレロフォン」号では、そのような過去を持つことは知らず、ただ「新顔」(the new-comer)として認識されます。語り手はこのような、登場人物たちには知り得ない情報を提示することで、読者に客観的な視点を与えています。

また、語り手はしばしば物語の進行を止めて、登場人物の行動や出来事の持つ意味、歴史的な背景などについて解説を加えます。これは、読者に考える時間を与え、物語を多角的に解釈することを促す効果があります。

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自由間接話法の活用

メルヴィルは『ビリー・バッド』において、自由間接話法を効果的に用いています。自由間接話法とは、登場人物の視点や言葉遣いを借りて、語り手が物語を語る手法のことです。

例えば、ビリーがクラッガードに濡れ衣を着せられた時の場面を見てみましょう。語り手は、ビリーの無実を信じる船員たちの心情を、彼らの言葉遣いを借りて表現しています。

> “He must be mad,” whispered one. “No, he’s shammin’,” said another. “See him shammin’ it up! See him! Ain’t he a rare one? Don’t kill that chap, Cap’n Vere! He’s more to be pitied than hung.” (彼は気が狂ったに違いない、と一人が囁いた。いや、あいつは狂言を打っているんだ、ともう一人が言った。見てみろよ、あいつの芝居を!まったく、なんて奴だ!あいつを殺しちゃいけませんぜ、ヴィア艦長!あいつは絞首刑にするより、哀れむべき男です。)

このように、自由間接話法を用いることで、語り手は登場人物たちの内面に迫り、彼らの心情をより鮮やかに描き出しています。

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聖書からの引用

『ビリー・バッド』には、聖書の言葉やエピソードが頻繁に登場します。例えば、ビリーはしばしば「ハンサムな海の若者」(handsome sailor)と表現されますが、これは聖書のヨセフを彷彿とさせます。また、クラッガードは、サタンを思わせる狡猾な人物として描かれています。

このように、聖書からの引用は、物語に深みを与え、登場人物たちの象徴性を高める役割を果たしています。

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