## メルヴィルのタイピーの光と影
「タイピー」における光と影
ハーマン・メルヴィルの小説「タイピー」は、南太平洋の島で過ごしたメルヴィルの体験に基づいた、自伝的小説です。この作品は、美しい自然描写と、文明社会への痛烈な批判、そして、未知なるものへの探求心と恐怖が織りなす、光と影の強いコントラストが特徴です。
光の側面:楽園的な自然と自由
タイピー族の住むヌク・ヒーヴァ島は、豊かな自然に恵まれた楽園として描かれています。太陽の光が燦々と降り注ぐビーチ、透き通るような青い海、緑豊かな谷などは、読者に強い憧憬を抱かせます。タイピー族の人々は、文明社会のしがらみから解放され、自然と調和した、素朴ながらも自由な生活を送っています。主人公トムも、文明社会の抑圧から逃れ、タイピー族との生活の中で、束の間の自由と安らぎを享受します。
影の側面:未知への恐怖と文明批判
しかし、楽園のようなヌク・ヒーヴァ島にも、影の部分が存在します。それは、タイピー族の習慣に対する未知なる恐怖、そして、文明社会への痛烈な批判です。
トムは、タイピー族の奇妙な習慣や、彼らが崇拝する神々に、恐怖を感じることがあります。特に、彼らの食人習慣は、トムにとって最大の恐怖であり、物語に不穏な影を落とします。
また、メルヴィルは、タイピー族の生活を美化する一方で、西洋文明の負の側面を鋭く批判しています。キリスト教の布教活動や、白人による搾取は、タイピー族の伝統的な生活を破壊し、彼らの心を蝕んでいく様子が描かれています。
光と影が織りなす複雑な世界観
「タイピー」は、楽園的な自然と、そこに潜む未知なる恐怖、そして、文明社会への痛烈な批判という、光と影が複雑に織りなす世界観を描いています。メルヴィルは、単純な二項対立ではなく、光と影が表裏一体となって存在する現実を、読者に突きつけます。