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メルヴィルの「タイピー」の思想的背景

## メルヴィルの「タイピー」の思想的背景

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当時のアメリカ社会における「文明」と「野蛮」

「タイピー」が出版された19世紀半ばのアメリカは、 westward expansion (西方進出) の真っただ中であり、それに伴い、ネイティブアメリカンとの衝突が深刻化していました。白人社会では、ネイティブアメリカンは「未開で野蛮な存在」と見なされ、教化の対象、あるいは排除の対象とされていました。このような時代背景の中で、メルヴィルは、南太平洋の島々での生活を通して、西洋文明の優位性に対する疑問を投げかけています。

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「高貴な野蛮人」概念の影響

「高貴な野蛮人」とは、文明社会の外側にいるがゆえに、文明人よりも純粋で道徳的に優れた人間という、18世紀ヨーロッパで生まれたロマン主義的な概念です。メルヴィル自身、この概念の影響を受けており、「タイピー」においても、タイピー族の生活は、物質的には豊かではないものの、争いごとがなく、人々が互いに助け合って生きている様子が描かれています。これは、当時のアメリカ社会における競争や物質主義に対する批判とも捉えることができます。

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メルヴィルの個人的な経験

メルヴィル自身、1841年、捕鯨船に乗船していた際に脱走し、南太平洋のマルケサス諸島に漂着し、タイピー族と生活を共にした経験があります。この経験は、「タイピー」の執筆に大きな影響を与えており、作中の描写には、メルヴィル自身の観察や体験が色濃く反映されています。特に、タイピー族の生活様式や習慣、宗教観などは、メルヴィルの詳細な描写によって、読者に生き生きと伝わってきます。

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