## メリアムの政治権力の表現
政治における権力―多様な形態とその関係性
政治学者ロバート・ダールは、「AはBにBが本来したくないことをさせる時、AはBに対して権力を持っている」と述べ、権力を他者の行動を操作する能力と定義しました。一方、チャールズ・メリアムは、より広範な権力の概念を提示しています。メリアムは、権力を「人間行動を条件付けるあらゆる関係」と定義し、政治における権力を単なる意思決定への影響だけでなく、人々の価値観、信念、欲求、さらにはアイデンティティまでも形作る力として捉えました。
権力の形態―物理的、心理的、そして社会的
メリアムは、政治権力をその発揮形態によって、大きく3つに分類しました。
* **物理的な力:** これは、軍事力や警察力といった、直接的な強制力によって人々の行動を制御する力を指します。
* **心理的な力:** プロパガンダや教育を通して人々の思考や感情に影響を与え、特定の行動を促したり、抑制したりする力です。
* **社会的な力:** 社会的地位、富、名声などを利用して、人々の行動を間接的に誘導する力を指します。
メリアムは、これらの権力の形態が複雑に絡み合い、相互に影響を与えながら機能していると指摘しました。例えば、物理的な力は、恐怖や服従を通じて心理的な力へと転換され、社会秩序を維持するために利用されます。また、社会的な力は、人々の価値観や規範を形成することで、物理的な力を行使することなく、行動を制御することを可能にします。
権力の源泉―多様な資源と戦略
メリアムは、権力の源泉についても多角的な分析を行っています。彼は、権力が特定の個人や集団に固定されたものではなく、社会状況や歴史的文脈によって変化する流動的なものであると捉え、以下のような権力の源泉を提示しました。
* **物質的な資源:** 土地、資本、技術といった経済的な資源や、軍事力などの物理的な資源が権力の源泉となります。
* **地位と役割:** 社会的な地位や役割は、権力を行使するための正当性や権威を与えます。
* **知識と情報:** 専門知識や情報へのアクセスは、意思決定に影響を与え、権力を行使するための重要な資源となります。
* **組織力:** 共通の目的のために組織化された集団は、個々の力よりも大きな影響力を持つことができます。
* **カリスマ性:** 特定の個人に備わった魅力や指導力は、人々を魅了し、行動を促す力となります。
メリアムは、これらの資源を効果的に活用することで、政治権力を獲得し、維持することができると考えました。また、彼は権力が常に争奪の対象となっていることを強調し、政治を権力を巡る絶え間ない闘争の場として捉えました。