## メリアムの政治権力の発想
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政治学者チャールズ・E・メリアム
チャールズ・エドワード・メリアム(1874-1953)は、20世紀前半に活躍したアメリカの政治学者です。シカゴ大学で長年教鞭をとり、政治学の教授として、またシカゴ市長顧問として、政治と社会の改革に積極的に関わりました。行動主義の先駆者として知られ、伝統的な政治学が重視してきた制度や法規範だけでなく、政治現象に影響を与える現実の政治行動や心理的側面を重視する姿勢を強調しました。
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メリアムの権力観:「人間が人間に影響を与えるあらゆる関係」
メリアムは、政治を「人間が人間に影響を与えるあらゆる関係」と広く定義し、その中心に権力の概念を据えました。彼にとって権力は、政治現象を理解する上で最も重要な要素であり、社会における資源配分や意思決定に大きな影響を与える力を持つと考えました。
メリアムは、権力を単に物理的な力や強制力として捉えるのではなく、より広範な概念として捉え、説得、威信、尊敬、愛情といった、人々に影響を与える様々な手段を含めました。彼は、権力は常に変化し、社会の様々な領域で作用し、個人や集団の間で複雑な相互作用を生み出す動的なものであると強調しました。
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政治権力の多様な形態:物理的、経済的、社会的、心理的な力
メリアムは、著書『政治科学体系』(1903年)の中で、政治権力を以下の4つの形態に分類しました。
1. **物理的な力:** 軍事力や警察力など、直接的な強制力。
2. **経済的な力:** 富や資源を支配することによる影響力。
3. **社会的な力:** 地位、名声、人脈など、社会的な関係性から生まれる影響力。
4. **心理的な力:** プロパガンダやイデオロギーなど、人々の信念や価値観に影響を与える力。
これらの権力は、単独で作用する場合もあるが、多くの場合、組み合わさって複雑な形で作用するとメリアムは指摘しています。
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権力の研究における行動主義的アプローチ:観察と測定の重視
メリアムは、権力を研究する上で行動主義的なアプローチを重視しました。彼は、伝統的な政治学が制度や法規範といった形式的な側面に偏っているとし、現実の政治現象を理解するためには、人々の行動や心理を重視する必要があると主張しました。
行動主義的なアプローチでは、観察可能な行動や測定可能なデータに基づいて、客観的な分析を行うことを重視します。メリアムは、権力の研究においても、人々の行動や心理を観察し、測定可能なデータを用いることで、より科学的で客観的な分析が可能になると考えました。