## メリアムの政治権力の批評
メリアムの政治権力に対する主な批判点
ロバート・A・ダールを筆頭に、メリアムの政治権力論に対しては多くの批判が寄せられてきました。主な批判点は以下の点が挙げられます。
* **権力の行動主義的定義に偏っている点:** メリアムは権力を「A が B に対して B が本来望まない行動をとらせることができる場合、A は B に対して権力を持っている」と定義しています。これは、権力を観察可能な行動に限定しすぎているという批判があります。権力は、目に見えない形で、人々の意識や行動を制約することもあるからです。例えば、社会的な規範や価値観は、人々の行動を無意識のうちに規定している場合があります。
* **潜在的な権力を考慮していない点:** メリアムの定義では、実際に権力が行使されている場面しか捉えることができません。しかし、権力を持つ者は、必ずしも常に権力を行使するとは限りません。潜在的な権力は、実際に行使されなくても、人々の行動に影響を与える可能性があります。
* **権力の非対称性に注目していない点:** メリアムの定義では、A と B の関係が対等であると想定されています。しかし、現実には、権力関係は非対称であることがほとんどです。例えば、国家と個人の関係、資本家と労働者の関係などでは、一方の方が圧倒的に大きな権力を持っています。
メリアムの政治権力論に対する擁護
一方で、メリアムの政治権力論は、権力の研究において重要な貢献をしたという点も指摘されています。
* **権力という概念を明確化**: メリアムは、それまで曖昧に捉えられていた権力という概念を、行動主義の視点から明確に定義しました。これは、権力を客観的に分析するための第一歩となりました。
* **政治における権力の重要性を強調**: メリアムは、政治を権力闘争の過程として捉え、権力の重要性を改めて認識させました。これは、政治現象を理解する上で重要な視点となります。
メリアムの政治権力論は、その後の権力研究に大きな影響を与えました。彼の定義は、現在でも権力を考える上での出発点として重要であり、その後の研究は、彼の定義を批判的に検討し、発展させることで進展してきました。