## メリアムの政治権力の価値
### 政治学における権力研究の重要性を説いた古典的名著
ロバート・A・ダールやハロルド・ラスウェルらとともに、政治学者デイヴィッド・トルーマンが提唱した行動主義政治学が隆盛を極めていた1960年代、チャールズ・E・メリアムの主著『政治権力:その社会的研究』(1934年)は、古典としての再評価を受けました。それは、権力現象の解明を政治学の中核に据えるべきだというメリアムの主張が、行動主義政治学の方法論的個人主義と親和性が高かったためです。
### 多様な学問分野の知見を総合した先駆的な研究
メリアムは、権力の多面的な実態を捉えるために、政治学だけでなく、社会学、心理学、歴史学、人類学などの知見を総合的に活用しました。これは、従来の政治学が法学や歴史学との結びつきが強く、他分野との学際的な研究が少なかったことを考えると、極めて先駆的な試みでした。
### 権力の多様な形態とメカニズムを分析
メリアムは、権力が単なる物理的な強制力や制度的な支配力としてではなく、社会的な影響力や心理的な操作など、多様な形態をとって作用することに着目しました。そして、プロパガンダ、イデオロギー、シンボル、エリートといった要素が、人々の認識や行動に影響を与え、権力関係を形成するメカニズムを分析しました。
### 権力研究における倫理的な視点を重視
メリアムは、権力の研究は単なる客観的な分析にとどまらず、倫理的な視点を持つべきだと主張しました。権力は、社会秩序の維持や公共の利益の実現のために用いられることもあれば、支配や搾取、抑圧の道具として悪用されることもあります。
### その後の権力研究に多大な影響を与えた古典
メリアムの政治権力論は、その後の政治学における権力研究に多大な影響を与え、今日でも多くの研究者に参照されています。特に、権力の多様な形態や作用メカニズムへの着目、学際的な分析視角、倫理的な問題意識などは、現代の権力研究においても重要な視点を提供しています。