## メリアムの政治権力と人間
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政治権力の概念
政治学者ロバート・A・ダールは、著書『誰が支配するのか?』の中で、A が B に本来であれば B がしたがらない行動をとらせる時に、A は B に対して権力を行使していると定義しました。これは権力を資源の不均衡と結びつけた、シンプルな定義です。
一方、チャールズ・E・メリアムは、より広義な権力の概念を提示しました。彼は権力を「人間行動を操作する能力」と定義し、その源泉として、身体的強制力、財産、社会的地位、安全、愛などの様々な要素を挙げました。メリアムは、権力は単に他者を支配する手段としてだけでなく、人間関係や社会構造を形成する力として捉え直す必要性を説きました。
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人間の多面的な側面と権力
メリアムの権力論は、人間を単なる合理的行動主体としてではなく、感情、欲望、信念など、多様な側面を持つ存在として捉えている点が特徴です。彼は、人間は自己保存や物質的利益だけでなく、愛情、承認、所属意識など、様々な欲求に基づいて行動すると考えました。
権力は、これらの多様な欲求に訴えかけることで、人間の行動に影響を与えることができます。例えば、愛や承認欲求は、特定の人間関係や集団への帰属意識を生み出し、その結果として、特定の行動規範や権力構造を受け入れることに繋がる可能性があります。
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権力の多様な形態と行使方法
メリアムは、権力の形態は多岐に渡り、その行使方法もさまざまであることを強調しました。彼は、身体的強制力や経済的制裁のような直接的な形態だけでなく、教育、プロパガンダ、シンボル操作など、間接的で目に見えにくい形態も存在すると指摘しました。
例えば、教育は知識や価値観を伝えることで、人々の思考様式や行動に影響を与える力を持っています。また、プロパガンダは特定の情報を操作して拡散することで、人々の感情や信念に訴えかけ、行動を誘導することができます。
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メリアムの政治権力論の現代的意義
現代社会においても、メリアムの権力論は重要な示唆を与えてくれます。グローバル化や情報化の進展に伴い、権力の形態や行使方法はますます複雑化しています。情報操作やフェイクニュース、ソーシャルメディアにおける影響力など、新たな形の権力が登場し、私たちの生活に影響を与えています。
メリアムの権力論は、このような複雑な現代社会において、権力の多様な形態や行使方法を見抜き、その影響力を批判的に考察する上で重要な視点を提供してくれるのです。