ミルトンの復楽園の表現
ミルトンが用いる壮大な比喩表現
ミルトンは『失楽園』の中で、壮大な比喩表現を頻繁に用いることで知られています。特に、宇宙の広大さや神の絶対的な力を表現する際に、この手法が効果的に使われています。
例えば、サタンが率いる堕天使軍の描写では、彼らを「地面に横たわる、あるいは燃え盛る鉱山の口の周りに群がる、巨大な体躯の巨人たち」と表現しています。この比喩は、読者に堕天使軍の巨大さと恐ろしさを印象付けるだけでなく、彼らが本来住んでいた天界の栄光と対比させることで、その没落をより劇的に見せています。
ラテン語風の語順
ミルトンは古典文学に深い造詣を持っていたため、『失楽園』の文章にはラテン語の影響が色濃く現れています。特に、語句の倒置や複雑な構文の使用は、ラテン語詩の文体を彷彿とさせるものです。
例えば、「彼の手には、運命の避けがたい姉妹たちが紡いだ糸よりも恐ろしいものが握られていた」という一節では、「恐ろしいもの」が文頭に置かれ、「握られていた」が文末に置かれています。このような語順は、通常の英語の語順とは異なり、読者に一種の緊張感を与える効果があります。
音韻の技巧
ミルトンは音韻の技巧を駆使することで、『失楽園』の文章に音楽的な美しさを与えています。特に、頭韻法や脚韻法の使用は、詩の韻律を整え、読者に心地よい響きを与えています。
例えば、「Man’s first disobedience, and the fruit / Of that forbidden tree」という有名な一節では、「fruit」と「forbidden」の頭韻、「disobedience」と「tree」の脚韻が用いられています。このような音韻の技巧は、詩の音楽性を高めるだけでなく、重要な語句を強調する効果も持っています。