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ミルトンの復楽園が描く理想と現実

ミルトンの復楽園が描く理想と現実

ジョン・ミルトンと『復楽園』の背景

ジョン・ミルトンの叙事詩『復楽園』は、失われた楽園の再建をテーマに、人間の堕落と救済を描いた作品です。この詩は、ミルトンが盲目になった後の1658年から完成までの数年間に書かれました。彼は英国内戦と共和国の時代を生き、王政復古の波に翻弄された時代の中で、理想と現実の狭間での人間の役割と神の計画を深く問う内容を綴っています。

『復楽園』における理想の描写

ミルトンは『復楽園』の中で、理想的な人間社会を描くと共に、神と人間との理想的な関係を模索しています。作品の中で、アダムとイブは失楽園後、罪を犯した後の世界でどのように生きるべきかを学びます。この過程で、彼らは自らの過ちを認め、神に対する服従と信仰を深めることで、理想的な生の復興を目指します。ミルトンはここにおいて、真の悔悛と神への帰依が理想的な存在へと導く道であると説いています。

現実の描写とその葛藤

一方で、ミルトンは人間の弱さや限界もリアルに描いています。アダムとイブが初めて罪を犯したとき、それはただの過ちではなく、自由意志の行使としての側面を持っていました。この自由意志の行使が、現実世界における葛藤や苦悩の原因となることを、ミルトンは鋭く指摘しています。アダムとイブが楽園を追放された後の生活は困難に満ちており、彼らは自然との闘争だけでなく、内面的な道徳的闘争にも直面しています。ミルトンは、理想を追い求める人間の努力と現実の厳しさが交錯する様子を描き出しています。

理想と現実の間での人間の役割

『復楽園』では、アダムとイブが経験する試練を通じて、人間が理想と現実の間でどのように振る舞うべきかが示されています。ミルトンは、人間が神の意志に従いつつも、現実の世界で自らの役割を見出し、それに積極的に取り組むべきだと説いています。この過程で、人間は自己の限界を認識しながらも、不完全ながらも神が設定した理想に向かって努力することが求められます。ミルトンにとって、このような努力そのものが、人間が現実世界で目指すべき「復楽園」の姿なのです。

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