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ミルトンの復楽園から学ぶ時代性

ミルトンの復楽園から学ぶ時代性

ミルトンと17世紀イングランド

ジョン・ミルトンが『失楽園』を執筆した17世紀イングランドは、政治的にも宗教的にも激動の時代でした。清教徒革命を経て王制が崩壊し、オリバー・クロムウェル率いる共和政が誕生しましたが、その後王政復古を経て再び王権が復活しました。このような政治的混乱は、人々の価値観や思想に大きな影響を与えました。

宗教的背景

宗教面では、イギリス国教会とピューリタン(清教徒)の間で激しい対立が生じていました。ピューリタンは国教会の儀式や権威を否定し、より純粋な信仰を求めました。ミルトン自身もピューリタンであり、『失楽園』には彼の宗教的信念が色濃く反映されています。

例えば、神の絶対的な権威や人間の自由意志、罪と罰、そして救済といったテーマは、当時の宗教的議論と密接に関連しています。特に、アダムとイブが蛇の誘惑に負けて禁断の果実を食べる場面は、人間の原罪と自由意志の問題を象徴的に描いています。

女性の地位

『失楽園』は、当時の社会における女性の立場についても示唆を与えてくれます。イブはアダムの肋骨から作られた存在であり、アダムに従属する存在として描かれています。これは、当時の家父長制的な社会秩序を反映したものであり、女性は男性よりも劣った存在だと考えられていました。

しかし一方で、ミルトンはイブに知性や感性を与え、アダムと対等に議論を交わす場面も描いています。これは、ミルトン自身が女性の知性や能力を認めていたことを示唆しているのかもしれません。

ルネサンスの影響

『失楽園』は、宗教的なテーマを扱った作品であると同時に、ルネサンス期の人文主義の影響も色濃く反映されています。アダムとイブは、神によって創造された存在であると同時に、自らの意志と理性を持つ人間として描かれています。これは、人間中心主義的な思想が台頭してきたルネサンス期の思潮を反映しています。

政治的メタファー

『失楽園』には、当時の政治状況を反映したと解釈できる部分も存在します。例えば、サタンを筆頭とする堕天使たちの反乱は、王権に対する反乱を暗示していると解釈することもできます。また、楽園から追放されたアダムとイブの姿は、共和政の崩壊と王政復古によって失われた理想社会を象徴していると解釈することも可能です。

このように、『失楽園』は単なる宗教文学を超えた、多層的な作品です。その時代背景やミルトンの思想を理解することで、作品をより深く読み解くことができます。

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