ミルトンの失楽園を面白く読む方法
1. 文脈を理解する
『失楽園』は17世紀のイギリスで、清教革命や王政復古など激動の時代背景の中で書かれました。著者のミルトンは、共和制を支持し、言論の自由を強く訴えた人物であり、後に失明という試練に見舞われます。このようなミルトンの思想や経験は、『失楽園』の根底に深く流れ込んでいます。
作品に取り組む前に、当時の歴史やミルトンの生涯について少し調べてみましょう。作者の置かれた状況や思想を知ることで、『失楽園』への理解がより深まり、作品を多角的に読み解くことができるでしょう。
2. 登場人物に注目する
『失楽園』には、神、サタン、アダム、イブなど、個性的な登場人物が多数登場します。それぞれの人物の立場、心情、関係性を読み解くことは、物語の奥深さを味わう鍵となります。
例えば、サタンは一般的に悪の象徴とされていますが、『失楽園』では、神の支配に反抗する力強い存在として描かれ、読者の共感を呼ぶこともあります。一方、アダムとイブは、楽園を追放されることで、人間らしい愛や罪の意識に目覚めていきます。登場人物たちの葛藤や成長に注目することで、単なる善悪の物語を超えた、人間存在の本質に迫るドラマが見えてくるはずです。
3. 美しい詩的な表現を楽しむ
『失楽園』は、英語詩の最高峰と言われるほど美しい韻文で書かれています。たとえ原文で読むのが難しくても、日本語訳でさえもその美しさは十分に伝わってきます。
特に、楽園の描写やサタンの雄弁な語り口は圧巻です。声に出して読んでみることで、言葉の響きやリズムを体感し、作品の世界観に浸ることができます。また、比喩や暗喩など、詩的な表現技法にも注目してみましょう。ミルトンの巧みな言葉遣いが、物語に深みと奥行きを与えていることが実感できるはずです。
4. 現代作品との関連性を見つける
『失楽園』は、その後の文学、美術、音楽など、様々な分野に大きな影響を与えてきました。現代の作品の中にも、『失楽園』のモチーフやテーマを受け継いだものが数多く存在します。
例えば、映画『猿の惑星』は、人間が楽園を追放されるという『失楽園』のテーマを踏襲しています。また、小説『蠅の王』は、人間の心に潜む悪の根源を描いており、『失楽園』のサタン像と共通する部分があります。現代作品と比較して読むことで、『失楽園』の普遍的なテーマや現代社会へのメッセージが見えてくるかもしれません。
5. 自分なりの解釈を見つける
『失楽園』は、一読しただけで理解できるほど単純な作品ではありません。様々な解釈が可能であり、時代や読者によってその受け止められ方も変化してきました。
大切なのは、先入観にとらわれず、自分自身の感性で作品と向き合うことです。登場人物たちの行動に疑問を感じたり、作者の意図が分からなかったりする部分があっても構いません。むしろ、そうした疑問や違和感を大切にし、自分なりの解釈を見つけていくことが、『失楽園』をより深く理解することにつながります。