## ミルトンの失楽園の評価
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出版当時
「失楽園」は、1667年の出版当時、賛否両論の作品でした。一部の批評家は、その壮大なテーマ、力強い文体、そして複雑な神学的な議論を賞賛しました。特に、サタンの反抗的な姿と雄弁さは、読者に強い印象を与え、物議を醸しました。
しかし、王政復古後のイングランドでは、共和主義者として知られていたミルトンの政治的な立場が、作品への評価に影を落とすこともありました。また、聖書の内容を詩という形で脚色することに対する批判もありました。
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18世紀
18世紀には、「失楽園」はイングランド文学の傑作としての地位を確立しました。ジョン・ドライデンやアレキサンダー・ポープといった著名な詩人たちがミルトンの作品を高く評価し、その影響を強く受けました。
この時期には、ミルトンの文体が模倣の対象となり、「ミルトン的崇高」と呼ばれるスタイルを生み出すことになりました。しかし、一部の批評家は、作品の長さと複雑さ、そしてサタンに魅力を感じさせる描写を批判しました。
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19世紀
ロマン主義の時代には、ウィリアム・ブレイクやパーシー・ビッシュ・シェリーといった詩人たちが、「失楽園」の反抗的な精神と個人の自由を追求する姿勢に共鳴しました。彼らは、サタンを、抑圧的な権力に対する抵抗の象徴と見なしました。
一方で、19世紀後半には、ミルトンの宗教的な信念や女性観に対する批判が高まりました。特に、ジョン・ミルトンが女性蔑視的な思想を持っていたとする見方から、イヴの描写が議論の的となりました。
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20世紀以降
20世紀以降も、「失楽園」は文学研究の重要なテーマであり続けています。フェミニズム批評、ポストコロニアル批評、精神分析批評など、さまざまな視点から作品が分析され、新たな解釈が生まれています。
現代の批評家は、ミルトンの言語の力強さ、複雑な登場人物造形、そして人間の自由意志、罪、贖罪といった普遍的なテーマを探求したことを高く評価しています。一方で、その神学的な主張や政治的な背景、そして性役割に関する描写は、依然として議論の的となっています。
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総括
「失楽園」は、出版から現在に至るまで、常に高い評価を受け続け、同時にさまざまな批判にもさらされてきました。その壮大なテーマ、力強い文体、そして複雑な登場人物たちは、時代を超えて読者を魅了し続けています。作品に対する評価は、批評家の文学観や時代背景、そして社会状況によって変化してきましたが、西洋文学における金字塔としての地位は揺るぎないものとなっています。