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ミルトンの失楽園の構成

ミルトンの失楽園の構成

ミルトンによる叙事詩「失楽園」の構成

は、古典的な叙事詩の伝統と、ミルトンの独自の芸術的、神学的目的の両方を反映しています。以下に、その主要な構成要素を詳しく見ていきましょう。

1. 全12巻の構造

「失楽園」は全12巻で構成されています。これは、古代ローマの詩人ヴェルギリウスの叙事詩「アエネーイス」の12巻構成を意識したものです。ヴェルギリウスは、古代ギリシャの詩人ホメーロスの叙事詩「イーリアス」(24巻)と「オデュッセイア」(24巻)を意識して「アエネーイス」を12巻構成にしたと言われています。ミルトンは、古典的な叙事詩の伝統を踏まえつつ、「失楽園」を12巻構成とすることで、壮大なスケールと、テーマの重厚さを表現しています。

2. イン・メディアス・レス

「失楽園」は、物語の冒頭で、すでにサタンが天国から追放された後、地獄に堕ちている場面から始まります。これは、「物語の途中から始める」という意味のラテン語の表現である「イン・メディアス・レス」という技法です。ミルトンは、サタンの反逆と堕落を物語の開始時点ですでに既成事実として提示することで、読者の関心を、神とサタンの対立の起源ではなく、その後のサタンの策略、アダムとイブの誘惑、そして人類の堕落という、より複雑な問題へと誘導しています。

3. 夢想文学の形式

ミルトンは、「失楽園」を、語り手が、聖霊の助力によって、過去の出来事や未来の出来事を幻視するという形式で書いています。これは、作者自身の主観や解釈を作品に反映させることができる、夢想文学という形式の一種です。ミルトンは、この形式を用いることで、「失楽園」を、単なる物語ではなく、神の存在、人間の自由意志、罪の起源といった、深遠な神学的テーマを探求する、壮大な思索の場としています。

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