## ミルトンの『失楽園』を読んだ後に読むべき本
### 考察対象作品
ジョン・ミルトンの叙事詩『失楽園』は、その壮大なスケール、複雑な神学論、そして美しい言語表現で、読者に深い感銘と多くの思索の糧を与えてくれます。アダムとイブの楽園追放という旧約聖書の物語を題材に、善と悪、自由意志と運命、罪と贖罪といった普遍的なテーマを扱い、人間存在の本質に迫る作品です。
### 『失楽園』の影響を受けた作品:ウィリアム・ブレイク『ミルトン』
『失楽園』を読み終えた後、その影響を色濃く受けた作品として、まず挙げられるのがウィリアム・ブレイクの『ミルトン』でしょう。ブレイクはミルトンを深く敬愛していましたが、同時にその思想には批判的な側面も持ち合わせていました。『ミルトン』は、預言者として描かれたブレイク自身の視点を通して、『失楽園』のテーマを再解釈し、人間の想像力と創造性を阻害するあらゆる権威に対して異議を唱える作品です。
### 女性の視点から描かれた『失楽園』:マリル・ジーン・ベッカー『The Last Night in Eden』
一方、『失楽園』の物語を全く異なる視点から描いた作品として、マリル・ジーン・ベッカーの “The Last Night in Eden” があります。この小説は、イブの視点から楽園追放の物語を語り直し、従来の男性中心的な解釈に一石を投じています。イブは、受動的な存在ではなく、知性と好奇心に満ちた女性として描かれ、善悪を知る木の実を食べるという選択も、自らの意志によるものとして肯定的に捉えられています。
### サタンの視点から描かれた『失楽園』:フィリップ・プルマン『ライラの冒険』シリーズ
さらに、『失楽園』に登場する堕天使サタンに焦点を当てた作品として、フィリップ・プルマンのファンタジー小説『ライラの冒険』シリーズが挙げられます。このシリーズでは、サタンは、権威主義的な教会組織に対抗する自由の象徴として描かれており、『失楽園』における悪の化身というイメージとは大きく異なっています。