## ミルトンの『失楽園』の感性
### 崇高なものへの畏敬の念と恐怖の入り混じる感覚
『失楽園』は、創世記におけるアダムとイヴの楽園追放の物語を題材に、壮大なスケールで人間の堕落、自由意志と運命、善と悪の対立といった普遍的なテーマを描いています。ミルトンは、この叙事詩を通じて、読者に崇高なものへの畏敬の念と恐怖の入り混じる感覚を呼び起こさせることに成功しています。
### 神の全能性と人間の無力さの対比が生む畏怖の念
ミルトンは、全能の神、反抗的なサタン、そして運命に翻弄されるアダムとイヴの姿を対比させることで、神の偉大さと人間の無力さを浮き彫りにします。神の圧倒的な力と、それに対する人間の脆さのコントラストは、読者に畏怖の念を抱かせます。特に、サタンが地獄の宮殿パンデモニアムで堕天使たちを従える様子や、神が天地創造を行う場面は、ミルトンの筆の力によって、畏怖を感じさせる壮大なスケールで描かれています。
### 楽園喪失の悲哀とノスタルジア
アダムとイヴが楽園を追放される場面は、『失楽園』の中でも特に重要な場面の一つです。ミルトンは、楽園の美しさと、それを失ったアダムとイヴの悲しみを対比させることで、読者に喪失感とノスタルジアを抱かせます。楽園は、人間にとっての ideal な状態、失われた故郷として描かれ、読者はアダムとイヴと共に、もう二度と戻ることのない楽園への郷愁を感じることになります。
### サタンの雄弁さとカリスマ性に対する魅力と反発
『失楽園』におけるサタンは、単なる悪の化身ではなく、複雑な心理を持つ魅力的な存在として描かれています。彼の雄弁さ、カリスマ性、そして反逆心は、読者に畏敬の念と同時に、一種の魅力を感じさせます。しかし同時に、サタンの欺瞞的な言葉や傲慢な態度は、読者に警戒心と反発を抱かせます。
### 自由意志と運命の狭間で揺れ動く人間の苦悩に対する共感
アダムとイヴは、自らの自由意志によって禁断の果実を口にし、楽園を追放されます。彼らの選択は、自由意志の勝利であると同時に、運命によって定められた悲劇でもありました。ミルトンは、自由意志と運命の狭間で苦悩するアダムとイヴの姿を通して、人間の弱さと愚かさを描き出すと同時に、抗えない運命に翻弄される人間の姿に共感を抱かせます。