ミルズのパワー・エリートの対極
多元主義
C・ライト・ミルズの「パワー・エリート」は、アメリカの権力を、ビジネス、政治、軍事のエリートからなる少数の閉鎖的なグループが支配していると主張し、大きな議論を呼びました。ミルズの分析に真っ向から異議を唱えるのが、「多元主義」と呼ばれる理論です。
多元主義の中心的な考え方
多元主義は、権力が単一のエリート層ではなく、多様なグループに分散していると主張します。この理論は、競合する利益団体、市民社会組織、選挙で選ばれた代表者など、様々なアクターが政治的意思決定プロセスに影響を与えることができると論じています。
多元主義の主要な論点
* **権力の分散:** 多元主義者は、権力が社会に広く分散しており、単一のグループがすべてを支配することは不可能だと主張します。
* **競合する利益団体:** 多種多様な利益団体が存在し、それぞれが独自の目標を掲げて政治に参加しています。これらのグループは、ロビー活動、選挙活動、世論形成を通じて政策に影響を与えようとします。
* **市民の参加:** 多元主義は、市民が選挙、抗議活動、社会運動などを通じて政治に参加できることを重視します。市民の積極的な関与は、権力の乱用を防ぎ、政府の責任を確保するために不可欠です。
* **政府の役割:** 多元主義において、政府は異なる利益の間の仲介役として機能し、妥協を図りながら政策を形成します。
代表的な学者と著作
多元主義を代表する学者としては、ロバート・ダールが挙げられます。彼の著書「誰が支配するのか：アメリカの民主主義における権力」は、ニューヘイブン市における政治的意思決定プロセスを分析し、単一のエリートではなく、複数のグループが影響力を持っていることを実証しました。
多元主義への批判
多元主義は、現実の権力構造を過度に楽観的に捉えすぎているという批判もあります。一部のグループは、他のグループよりもはるかに多くの資源や影響力を持っており、政治プロセスにおいて優位に立つ可能性があります。