## ミルの自由論の原点
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影響を受けた思想家
ジョン・スチュアート・ミルは、その生涯を通じて多様な思想家の影響を受けました。特に、「自由論」には以下の思想家たちの思想が色濃く反映されています。
* **ジェレミー・ベンサム:** ミルの後援者でもあったベンサムは、功利主義の創始者として知られています。ミルはベンサムの思想に強い影響を受け、「最大多数の最大幸福」という功利主義の原則を自身の自由論に取り入れました。
* **ジェームズ・ミル:** ミルの父であるジェームズ・ミルもまた、ベンサムと同じく功利主義者でした。彼はミルの教育に深く関与し、その思想形成に大きな影響を与えました。
* **ハリエット・テイラー・ミル:** ミルの妻であるハリエットは、フェミニストとしても知られており、女性の権利拡大を訴えました。ミルはハリエットとの交流を通じて、女性の自由と平等についても深く考えるようになりました。「自由論」の中でも、女性の権利について触れられている箇所があり、これはハリエットの影響が大きいと考えられています。
* **ヴィルヘルム・フォン・フンボルト:** ドイツの言語学者・政治思想家であるフンボルトは、「人間の自由な発展」を重視する思想を展開しました。ミルはフンボルトの思想から影響を受け、個人の自己実現と自由の重要性を認識しました。
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執筆の背景
「自由論」は、19世紀のイギリス社会を背景に執筆されました。当時のイギリスは、産業革命を経て経済的に大きく発展を遂げていましたが、その一方で、貧富の格差の拡大や労働問題など、様々な社会問題も抱えていました。
また、ヴィクトリア朝時代であった当時のイギリスは、道徳的に非常に厳格な社会でした。個人の行動は常に社会から監視され、自由は制限されていました。
このような時代背景の中で、ミルは「自由論」を執筆しました。彼は、「自由論」の中で、個人の自由の重要性を訴え、国家や社会による個人の自由への介入を最小限に抑えるべきだと主張しました。
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自由論の主題
ミルは「自由論」の中で、「他者に危害を加えない限りにおいて、個人は自分の思うままに行動する自由を持つべきである」という原則を掲げました。これは、「危害原則」と呼ばれ、「自由論」の中心的なテーマとなっています。
ミルは、個人の自由は、社会全体の幸福にとって不可欠であると論じました。個人が自由に考え、行動することによって、社会は発展し、進歩していくと考えたのです。