ミュルダールのアジアのドラマを面白く読む方法
1.「アジアのドラマ」を読む前の準備
まず、本書を読む前に、ミュルダールが本書を執筆した背景や時代状況について理解を深めておくことが重要です。1968年に出版された本書は、当時の冷戦構造やアジア諸国の独立、経済発展といった時代背景の中で書かれました。
ミュルダールはスウェーデン出身の経済学者であり、インドなどで実際に経済政策の策定に関わった経験を持ちます。そのため、本書は単なる机上の空論ではなく、彼の豊富な経験と膨大なデータに基づいた説得力のある内容となっています。
特に、彼が本書で提示した「ソフトステート」という概念は、当時のアジア諸国が抱えていた政治や行政の腐敗、制度の不備などを的確に表現しており、後の開発経済学に大きな影響を与えました。
2.「アジアのドラマ」を読み解くためのポイント
「アジアのドラマ」は、1000ページを超える大著であり、その内容は多岐にわたります。そこで、本書をより深く理解するために、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
まず、ミュルダールが本書で強調しているのは、「経済発展」は単なる経済指標の上昇だけを意味するのではなく、社会全体の変革を伴うものであるということです。彼は、伝統的な価値観や社会構造が経済発展の大きな制約となっていることを指摘し、教育や社会福祉の充実などを通じた「人間開発」の重要性を訴えています。
また、ミュルダールは、西洋諸国が経験したような発展モデルをアジア諸国にそのまま当てはめることには批判的でした。彼は、それぞれの国が置かれた歴史的、文化的背景を踏まえた上で、独自の開発戦略を構築していくことの重要性を説いています。
3.「アジアのドラマ」を現代に活かす
出版から半世紀以上が経った現在でも、「アジアのドラマ」で提起された問題は、依然として多くのアジア諸国にとって重要な課題となっています。
例えば、近年、中国やインドなどの新興国が急速な経済成長を遂げていますが、その一方で、貧富の格差の拡大や環境問題など、新たな課題も浮き彫りになっています。
ミュルダールの主張は、これらの課題に対しても重要な示唆を与えてくれます。私たちは、彼の分析を踏まえ、経済発展と社会正義、持続可能性を両立させるための新たな開発モデルを模索していく必要があるでしょう。