## ミュルダールのアジアのドラマの話法
### グンナー・ミュルダールとその立場
グンナー・ミュルダール(1931-2009)は、スウェーデン出身の経済学者であり、開発経済学の分野における影響力のある人物です。彼は、1974年から1982年まで世界銀行のチーフエコノミストを務め、その後も開発問題に関する国際機関で活躍しました。
### アジアのドラマ:研究の背景と目的
ミュルダールは、1968年に出版された著書『アジアのドラマ:貧困問題への研究』(Asian Drama: An Inquiry into the Poverty of Nations)で、南アジア諸国の経済発展の問題を分析しました。この研究は、10年以上にわたる現地調査と膨大なデータに基づいており、開発経済学の古典として広く読まれています。
### ミュルダールのアプローチ:制度と価値観への着目
ミュルダールの分析は、従来の経済学が重視してきた資本や労働といった要素だけでなく、社会制度や文化的な価値観にも焦点を当てている点が特徴です。彼は、南アジア諸国の貧困は、植民地支配の影響や伝統的な社会構造に起因する、非効率な制度や価値観によって引き起こされていると主張しました。
### 具体的な議論:ソフトステートと価値観の対立
ミュルダールは、『アジアのドラマ』の中で、南アジア諸国の政府を「ソフトステート」(soft state)と特徴付けました。これは、政府が政策を実行する能力や意思が弱く、汚職や縁故主義が蔓延している状態を指します。彼はまた、伝統的なカースト制度や宗教観が、経済発展を阻害する要因となっていると指摘しました。
### 批判と影響:西洋中心主義と政策への影響
ミュルダールの分析は、西洋中心的な視点に基づいているとして批判されることもあります。しかし、彼の著書は、開発経済学における制度や価値観の重要性を認識させ、その後の研究に大きな影響を与えました。